「着物を自分で着たい!」と思っても、着付け教室に通う時間はなかなかないし、動画を見ても手順が多すぎて途中で挫折してしまうことってありますよね。でも実は、ポイントさえ押さえれば、初心者の方でも15分あればきれいに着物を着ることができるんです。
この記事では、難しい専門用語や複雑なルールはできるだけ省いて、誰でも実践できる「簡単着付け」の手順を解説します。大切なのは、完璧を目指しすぎないこと。まずは気軽な気持ちで、お気に入りの着物を広げてみてくださいね。
初心者が着付けを始める前に準備する道具とは?
着付けを始める前に、まずは手元に必要な道具を揃えておきましょう。途中で「あれがない!」と慌てると、せっかくきれいに決まった部分も崩れてしまいます。特別な道具ばかりだと思われがちですが、実はお家にあるもので代用できる場合も多いんですよ。
1. 着物と帯以外に最低限必要な小物リスト
着付けに必要な小物は意外とシンプルです。これさえあれば形になるという、最低限のリストを用意しました。まずはこれらが手元にあるか確認してみてくださいね。
- 肌襦袢(はだじゅばん)
- 裾よけ
- 長襦袢(ながじゅばん)
- 腰紐(3〜4本)
- 伊達締め(だてじめ)
- 帯板
- 衿芯(えりしん)
- 足袋
肌襦袢と裾よけが一体になった「ワンピースタイプ」の肌着があれば、それ一枚で済むのでとても便利です。もし専用の肌着がなければ、襟ぐりの大きく開いたキャミソールと、滑りの良いペチコートでも代用できます。
2. フェイスタオルを使った体型補正のやり方
着物を美しく着るための最大の秘訣は、体の凹凸をなくして「寸胴(ずんどう)」にすることです。日本人の体型は着物に合っていると言われますが、それでもウエストのくびれや背中のくぼみは着崩れの原因になります。ここで活躍するのが、どこの家庭にもあるフェイスタオルなんです。
- フェイスタオル(2〜3枚)
- マスキングテープや紐(固定用)
タオルの使い方はとても簡単です。ウエストのくびれ部分にタオルを巻いて、段差を埋めるイメージで補正します。胸板が薄い方は、鎖骨の下あたりにタオルを当てると、衿元がふっくらとして若々しい印象になりますよ。
3. 着付けがスムーズに進む事前の配置テクニック
着付けに時間がかかる原因の多くは、途中で道具を探したり、紐が絡まったりすることにあります。15分で着付けを完了させるためには、手に取りやすい場所に道具を配置する「段取り」が欠かせません。
- 着物は「たとう紙」から出して広げておく
- 腰紐は中心を持ってクリップで留めておく
- 鏡の前に立つ位置を決める
着物は袖を通しやすいように広げておき、腰紐はすぐに手に取れるよう、椅子の背もたれなどに掛けておくとスムーズです。足袋は着物を着てからだと履きにくいので、一番最初に履いておくのを忘れないでくださいね。
15分で着物を着るための時間配分の目安
ただ闇雲に着始めるのではなく、各工程にどれくらいの時間をかけるか意識するだけで、手際はぐっと良くなります。最初は時計を見ながら進めるのは大変かもしれませんが、この目安を知っておくだけで焦らずに取り組めますよ。
1. 肌着から長襦袢までは3分で済ませる
着付けの土台となる肌着と長襦袢は、手早く済ませたい工程です。ここはあまり神経質にならず、シワが寄らないように体に沿わせることを意識しましょう。肌着を着て、補正タオルを巻き、その上から長襦袢を羽織るまでを3分で完了させるのが理想です。
長襦袢は着物の「下地」のような存在です。ここが緩んでいると後から着る着物も崩れやすくなるので、手早くかつ丁寧に、体の中心を意識して着付けるのがポイントです。
2. 着物本体を着るのにかける時間は7分
ここが一番のメインパートですね。裾の長さを決めたり、腰紐を結んだりと工程が多いので、一番時間をかけて丁寧に行います。7分という時間は長く感じるかもしれませんが、初心者の方はここでしっかり形を作ることが、きれいな仕上がりへの近道になります。
鏡を見ながら、裾が床と平行になっているか、背中の縫い目が真ん中にきているかをチェックしながら進めましょう。慣れてくれば、この工程も5分程度でできるようになりますよ。
3. 帯結びを5分で終わらせるための工夫
最後は帯結びです。今回は初心者でも簡単にできる「半幅帯(はんはばおび)」を使います。名古屋帯などのお太鼓結びは少し練習が必要ですが、半幅帯ならリボン結びの応用で可愛らしく仕上がります。
5分あれば、結んで形を整え、後ろに回すところまで十分にできます。帯が緩まないようにしっかりと締めることだけ意識して、あとは自由に形作って楽しみましょう。
着崩れを防ぐ土台となる長襦袢の着方
「着付けの良し悪しは長襦袢で決まる」と言われるほど、この工程は重要です。見えない部分だからと手を抜かず、ここできれいな土台を作っておけば、長時間着ていても着崩れしにくくなります。
1. 衿芯を通して背中の中心を合わせる手順
長襦袢の衿には、必ず「衿芯」を通しておきましょう。これがあるだけで、衿元がピシッとして顔周りが華やかになります。衿芯を通したら、長襦袢を羽織り、背中の縫い目(背中心)が自分の背骨の真上に来るように合わせます。
- 衿芯を長襦袢の衿に通す
- 長襦袢を羽織る
- 片手で背中心をつまみ、もう片方の手で衿先を持つ
- 左右対称になっているか確認する
左右の衿先(えりさき)を合わせて持ち、体の前で同じ高さになっているか確認すると、自然と背中心が合います。このひと手間が、後々の仕上がりを左右するんです。
2. 衣紋を拳一つ分きれいに抜くコツ
着物姿の色っぽさや上品さを演出するのが、首の後ろの空間である「衣紋(えもん)」の抜き具合です。詰めすぎると窮屈に見え、抜きすぎるとだらしない印象になってしまうので、程よいバランスが大切です。
目安は「握り拳一つ分」です。長襦袢の背中の縫い目を下にぐっと引き、首と衿の間に拳が入るくらいの隙間を作ります。この状態をキープしたまま、次の工程に進むのがコツですよ。
3. 胸紐を使って衿元をしっかり固定する方法
衣紋を抜いて衿を合わせたら、その形が崩れないように胸紐で固定します。この紐はきつく締めすぎると苦しくなりますが、緩すぎると衿が開いてきてしまうので、加減が少し難しいポイントかもしれません。
- 胸のすぐ下あたりに紐を当てる
- 背中で交差させて前で結ぶ
- 余った紐は挟み込む
紐を結んだら、必ず指を一本入れてみて、息苦しくないか確認してください。最後に長襦袢の背中のシワを脇に寄せておくと、着物を重ねたときに背中がすっきりきれいに見えますよ。
裾の位置を決めて着物を羽織る手順
長襦袢が着られたら、いよいよ着物を羽織ります。ここでは着物の長さを決める「裾合わせ」が重要なステップになります。自分の身長に合わせて着物の位置を調整するのは、着物ならではの面白い工程ですよね。
1. くるぶしが隠れる長さに裾を調整する
着物を羽織ったら、両手で衿先を持ち、裾を床すれすれまで持ち上げます。そこから少しずつ下ろしていき、くるぶしが隠れるくらいの長さに調整します。これが着物の標準的な長さになります。
フォーマルな場では長めに、カジュアルに街を歩くなら少し短めにすると歩きやすいですよ。鏡を見ながら、裾のラインが床と平行になるように意識してみてください。
2. 上前と下前の幅を正しく決める方法
着物は身体の左側が上になるように重ねます。まず、右側の布(下前)を体に巻きつけ、左脇の縫い目から10センチほど余る位置に合わせます。次に、その上から左側の布(上前)を重ねます。
- 上前(左側の布)を合わせる
- 下前(右側の布)を中に入れる
- 上前をもう一度重ねて位置を決める
上前の端が、右足の親指の付け根あたりに来るのが美しい位置です。幅が広すぎると歩きにくくなるので、自分の体幅に合わせて調整しましょう。このとき、下前の裾(褄先)を10センチほど引き上げておくと、歩いたときに裾から下前が見えずにきれいです。
3. 裾が広がらないように腰紐を結ぶ位置
裾の位置が決まったら、腰紐で固定します。この腰紐が着物全体を支える最も重要な紐になります。結ぶ位置は、おへその上あたり、腰骨の高い位置が安定します。
紐を前から後ろに回し、背中で交差させて強く締めます。この紐だけは「少しきついかな?」と思うくらいしっかり締めておくのがポイントです。ここが緩いと、歩いているうちに裾が落ちてきてしまいます。
腰紐を結んでおはしょりを整える方法
腰紐を結ぶと、帯の下に余分な布が出てきます。これを「おはしょり」と呼びます。おはしょりがきれいに整っていると、着物姿全体が引き締まって見えます。最初はもこもことしがちですが、コツを掴めばすっきり整えられますよ。
1. 苦しくないけれど緩まない腰紐の締め方
先ほど「しっかり締める」とお伝えした腰紐ですが、食後に苦しくならないか心配ですよね。ポイントは、紐全体を強く締めるのではなく、脇の部分だけをキュッと締めることです。
お腹の前は少し余裕を持たせ、脇で紐を交差させるときに力を入れると、苦しくないのに着崩れない絶妙な締め具合になります。結び目は中心を避けて、少し左右にずらすと帯を巻いたときに当たりません。
2. おはしょりのシワを脇に寄せるテクニック
おはしょり部分には、どうしても布のたるみやシワが寄ってしまいます。これをそのままにしておくと、お腹周りが太って見えてしまう原因になります。
- 両手の親指を腰紐と着物の間に入れる
- 中心から脇に向かってシワをしごく
- 余分な布を脇の縫い目に集める
この動作を数回繰り返すだけで、おはしょりが平らになります。脇に集まったシワは、後ろに折り込んで隠してしまいましょう。
3. 背中のシワを下に引いて伸ばすポイント
おはしょりを整えるときは、前だけでなく背中のチェックも忘れずに。背中にシワが寄っていると、後ろ姿が残念な印象になってしまいます。
背中の中心にある縫い目を持って、下に向かってぐっと引きます。こうすることで、背中の布がピンと張り、衣紋もきれいに抜けた状態をキープできます。「前は横へ、後ろは下へ」と覚えておくと良いですね。
顔まわりを美しく見せる衿合わせのポイント
おはしょりが整ったら、次は衿元(えりもと)を整えます。ここは顔に一番近い部分なので、第一印象を大きく左右します。自分に似合う衿合わせを見つけるのも、着物の楽しみの一つですよ。
1. 喉のくぼみが見える位置で衿を交差させる
衿を合わせる深さは、喉のくぼみが少し見えるくらいが上品で標準的です。これより詰めると真面目な印象に、開けると色っぽい印象になりますが、まずは基本の位置を目指しましょう。
- 下前(右側の衿)を胸に沿わせる
- 上前(左側の衿)を重ねる
- 喉のくぼみを確認する
このとき、長襦袢の半衿(白い衿)が1.5センチから2センチほど見えるように、着物の衿を重ねます。この白いラインが顔色を明るく見せてくれるレフ板効果のような役割を果たします。
2. コーリンベルトや紐で衿を固定する手順
衿の位置が決まったら、動いてもずれないように固定します。ここでは「コーリンベルト」というゴム製の便利な道具を使うと簡単です。もちろん、腰紐を使っても構いません。
コーリンベルトを使う場合は、下前の衿(右側)の裏側にクリップを留め、背中を通して上前の衿(左側)に留めます。ゴムの伸縮性があるので、紐で結ぶよりも胸への圧迫感が少なく、初心者の方には特におすすめです。
3. 胸元のシワを取ってすっきり見せるコツ
衿を合わせると、どうしても胸の上にたるみが出やすくなります。このたるみは、そのまま帯の中に入れてしまうときれいに処理できます。
衿の下、おはしょりの内側に手を入れて、余分な布を下に向かって引きます。胸の布が肌にピタッと張り付くようなイメージです。最後に伊達締め(だてじめ)を締めて、衿元とおはしょりをしっかり固定すれば、着物の着付けは完了です!
初心者におすすめな半幅帯の簡単な結び方
着物が着られたら、最後に帯を結びます。「お太鼓結び」は帯枕や帯揚げなど小物が多くて大変ですが、「半幅帯(はんはばおび)」なら紐も使わず、リボン結びができれば誰でも結べます。カジュアルな普段着にはぴったりの帯ですよ。
1. 胴に2巻きして手先とタレを結ぶ
まずは帯の端(手先)を50センチほど取り、半分に折って肩に預けます。残りの長い部分を胴に2回巻きつけます。帯板を入れるのを忘れないようにしてくださいね。
- 手先を肩に掛ける
- 胴に2回巻く
- しっかりと引き締める
2回巻き終わったら、手先と、巻いてきた帯の端(タレ)を持って、ぎゅっと締め上げます。ここで緩いと帯が回ってしまったり下がってきたりするので、息を吐きながらしっかりと締めるのがポイントです。
2. リボン結びをして形を整える手順
しっかりと締めたら、手先とタレを結びます。あとは靴紐を結ぶのと同じ要領で、リボン結びを作るだけです。リボンの大きさや羽の長さを調整して、バランスを見ましょう。
結び目が緩まないように、結び目の根元をしっかりと固く結んでください。リボンの形ができたら、羽の部分を少し広げたり、立体的に整えたりすると、より華やかな印象になります。「文庫結び」と呼ばれる基本の形です。
3. 結び目を後ろに回すときの注意点
きれいに結べたら、その結び目を背中側に回します。このとき、ただ回すのではなく「時計回り(右回り)」に回すのが鉄則です。逆に回してしまうと、せっかく合わせた着物の衿が崩れてしまいます。
お腹を引っ込めて、帯の上側を持って、勢いよく「えいっ」と回しましょう。結び目が背中の真ん中に来れば完成です。鏡を見て確認してくださいね。
全身鏡で確認したい着付けの仕上げチェック
すべて着終わったら、最後に全身鏡の前でチェックを行います。この最終確認で細かい部分を修正するだけで、仕上がりのクオリティが格段に上がります。「なんとなく変だな」と思ったら、ここを見直してみてください。
1. 背中の中心線が真っ直ぐになっているか
まずは後ろ姿です。背中の縫い目(背中心)が、背骨に沿って真っ直ぐ下りているか確認しましょう。もしずれていたら、おはしょりの下から手を入れて、縫い目を中央に引き寄せます。
背中心が真ん中にあると、凛とした後ろ姿になります。自分では見えにくい場所なので、合わせ鏡をするか、スマホのタイマーで写真を撮って確認するのもおすすめです。
2. 裾の長さが左右対称になっているか
次に足元を見ます。裾の長さが左右で違っていたり、短すぎて足首が見えすぎていたりしませんか?もし長さが気になるようなら、おはしょりの下から手を入れて、少し引っ張ったり持ち上げたりして微調整できます。
3. 帯の位置が低すぎないか確認する
最後に帯の位置です。帯が下がっていると、足が短く見えてしまうし、なんとなく老けた印象になりがちです。帯の下側が、おへその位置あたりに来ているのが理想的です。
もし下がっているようなら、帯全体をグッと持ち上げてみてください。帯の上側が胸高の位置にあると、若々しくスタイル良く見えますよ。
外出先で着崩れに気づいたときの対処法
「きれいに着て出かけたはずなのに、トイレに行ったら崩れていた!」なんてこともありますよね。でも焦らなくて大丈夫です。着物は洋服と違って、多少崩れてもその場で直すことができます。リカバリー方法を知っておけば、安心して外出できますよ。
1. 衿元が緩んできたときに引っ張る場所
動いているうちに衿元が緩んで、胸元がだらしなく開いてしまうことがあります。そんなときは、身八つ口(脇の開いている部分)から手を入れて、下前の衿を横に引きます。
- 左の身八つ口から手を入れる
- 下前の衿先を軽く引く
- おはしょりを下に引いて整える
これだけで衿元がピシッと閉まります。決して衿そのものを上から引っ張らないように注意してくださいね。
2. 裾が下がってきたときのトイレでの直し方
階段の上り下りなどで裾が踏んでしまいそうになったり、長くなってきたりしたときは、腰紐の上でおはしょりを持ち上げて調整します。おはしょりをめくり、その下にある着物を腰紐に挟み込むようにして引き上げれば、裾の長さは元通りになります。
トイレの際は、着物の裾、長襦袢の裾を順に持ち上げ、帯にクリップで留めておくと汚れません。終わったら逆の手順で下ろし、最後にタレ先が折れていないか確認しましょう。
3. おはしょりが膨らんだときの応急処置
座ったり立ったりを繰り返すと、おはしょりが空気を含んで膨らんでくることがあります。そんなときは、帯の下に指を入れて、左右の脇に向かって空気を押し出すようにしごきます。
余分な布やたるみを脇に追いやってしまえば、お腹周りは再びすっきりします。帯締めをしている場合は、帯締めの位置を少し直すだけでも見た目がシャキッとしますよ。
まとめ
着付けは「習うより慣れろ」の世界です。最初は手順を思い出すのに時間がかかるかもしれませんが、何度か袖を通すうちに、手が自然と動きを覚えてくれます。15分で着られるようになると、ちょっとしたお出かけやランチにも気軽に着物を選べるようになり、ファッションの楽しみがぐっと広がります。
まずは今日、お家の鏡の前で一度練習してみてください。少しくらい形が歪んでいても、自分で着た着物で過ごす時間は特別で、心豊かなものになるはずですよ。ぜひ、着物のある生活を楽しんでくださいね!
