「着物を着てみたいけれど、下着はどうしたらいいの?」「洋服のインナーじゃダメなのかな?」と迷ってしまうことはありませんか。
普段の洋服とは違って、着物の下に着るものは外からは見えません。だからこそ、「本当にこれで合っているのかな」と不安になってしまうんですよね。でも、基本さえ押さえておけば大丈夫です。実は、着物を美しく快適に着るための「縁の下の力持ち」こそが、見えない部分のインナーなんです。
この記事では、着物の下に着るものの基本アイテムから、季節ごとの調整方法、洋服のインナーでの代用テクニックまで、初心者さんが知りたいポイントを丁寧に解説します。見えない部分を少し整えるだけで、着崩れしにくくなったり、一日中楽に過ごせたりするんですよ。まずは基本の「き」から一緒に見ていきましょう。
着物の下に着るものは大きく分けて3種類
着付けを習い始めたり、レンタル着物を利用しようとしたりすると、聞き慣れない名前のアイテムがたくさん出てきて驚くかもしれません。
でも、難しく考える必要はありません。着物の下に着るものは、役割ごとに整理するととてもシンプルです。大きく分けると、肌に直接触れるもの、体型を整えるもの、着物の土台になるものの3つだけなんです。
それぞれの役割を知っておくと、準備するときに迷わなくなりますよ。
1. 最初に身につける肌着類
まずは一番下、素肌の上に直接着る「肌着」です。洋服で言えば、キャミソールやペチコート、ショーツにあたる部分ですね。
着物は一度着ると簡単には洗えないものが多いですよね。特に絹の着物は水に弱いので、汗や皮脂汚れは大敵です。大切な着物を守るために、肌着は欠かせません。
一般的には「肌襦袢(はだじゅばん)」と「裾よけ(すそよけ)」というアイテムを使います。これらは着物専用に作られているので、着心地も良いですし、静電気も起きにくい工夫がされています。
2. 体のラインを整える補正グッズ
次に必要なのが「補正」のためのアイテムです。これは洋服にはない、着物ならではのステップかもしれません。
洋服は体の曲線(バストやウエストのくびれ)を活かして着るものですが、着物はその逆なんです。体の凹凸をなくして、寸胴(ずんどう)のような筒状の体型にしたほうが、シワなくきれいに着られます。
そのために使うのが、タオルや補正パッドです。ウエストのくびれや背中のくぼみを埋めることで、着崩れを防ぐ大切な役割を果たしてくれます。「太って見えないかな?」と心配になるかもしれませんが、実は補正をしたほうがスッキリ細見えすることもあるんですよ。
3. 着物の土台となる長襦袢
最後は、着物のすぐ下に着る「長襦袢(ながじゅばん)」です。
これは肌着というよりは、着物の一部のような存在かもしれません。襟元や袖口、裾からちらりと見えるので、色や柄選びでおしゃれを楽しむこともできます。
また、長襦袢は着物の滑りを良くして、裾さばきを助ける役割もあります。この長襦袢をきれいに着られるかどうかが、最終的な着姿の美しさを決めると言っても過言ではありません。
肌襦袢と裾よけの役割とは?
「肌襦袢」と「裾よけ」。名前だけ聞くと古めかしくて難しそうですが、要は「上半身用」と「下半身用」の肌着のことです。
これらを着るのには、ちゃんとした理由があります。ただの習慣ではなく、着物を快適に着るための機能が詰まっているんです。
1. 大切な着物を汗や汚れから守るため
一番の役割は、やっぱり着物の保護です。
着物は襟元や背中など、肌が直接触れる部分が汚れやすいものです。肌襦袢を着ることで、皮脂や汗が着物に染み込むのを防いでくれます。
特に夏場や暖房の効いた室内では、意外と汗をかくものですよね。吸水性の良い綿や麻素材の肌襦袢なら、汗をサッと吸い取ってくれるので、不快なベタつきも軽減できます。大切な着物を長く着るためにも、肌着は必須アイテムです。
2. 足さばきを良くして歩きやすくするため
下半身に着る「裾よけ」は、歩きやすさをサポートしてくれます。
着物は長い布を巻き付けて着るので、足に布がまとわりつくと歩きにくいですよね。裾よけには、滑りの良い「キュプラ」や「ポリエステル」といった素材がよく使われています。
これをつけることで、着物の裾が足に絡まるのを防ぎ、スムーズに歩けるようになります。「シュッ」という衣擦れの音も、裾よけのおかげできれいに響くんですよ。また、冬場は冷え対策としても役立ちます。
3. 初心者には便利なワンピースタイプも人気
「上下バラバラだと着るのが面倒…」という方には、ワンピースタイプがおすすめです。
これは「肌襦袢」と「裾よけ」がつながったもので、「着物スリップ」とも呼ばれています。頭からスポッとかぶる、あるいは前で紐を結ぶだけで着られるので、手間がかかりません。
さらに、洗濯機で丸洗いできるものが多いのも嬉しいポイントです。最初はワンピースタイプを1枚用意しておくと、着付けの準備がぐっと楽になりますよ。
肌着のタイプ比較
| タイプ | 特徴 | おすすめの人 |
|---|---|---|
| 肌襦袢+裾よけ | 体型に合わせて調整しやすい | 自分のサイズにこだわりたい人 |
| ワンピースタイプ | 着脱が簡単で着崩れしにくい | 初心者、手軽に済ませたい人 |
長襦袢は着物の形を決める大切な土台
長襦袢は、着物姿の「骨組み」を作るようなものです。
外からは少ししか見えませんが、この長襦袢がぐずぐずだと、上に着る着物もピシッと決まりません。逆に言えば、長襦袢さえきれいに着られていれば、着付けの8割は成功したようなものなんです。
1. 肌着と着物の間に着るクッション役
長襦袢は、肌着(肌襦袢・裾よけ)と着物の間に着ます。
着物は裏地がついているものもありますが、それでも生地同士の摩擦が気になりますよね。長襦袢はその摩擦を減らすクッションのような役割をしてくれます。
また、着物の袖口から肌着が丸見えになるのを防ぐという、見た目の役割も大きいです。長襦袢の袖丈は着物に合わせて調整されているので、動いたときに中の肌着が見えてしまう心配がありません。
2. 襟元から少しだけ見える半衿のおしゃれ
長襦袢のもう一つの楽しみは、「半衿(はんえり)」です。
襟元に縫い付けてある白い布のことですが、これは顔に一番近いパーツですよね。白ですっきりと清楚に見せるのも素敵ですし、色柄ものに変えて華やかさをプラスするのも人気です。
「今日はどんな半衿にしようかな」と考えるのも、着物の醍醐味のひとつ。たった数センチ見えるだけですが、全体の印象をガラリと変える力を持っています。
美しい着姿を作る補正タオルの使い方
「補正」と聞くと、「もっと太って見えるんじゃないの?」と不安になるかもしれません。でも、着物の場合は逆なんです。
補正をしっかり行うことで、着物の生地に余計なシワが入らず、スッとした美しい立ち姿になります。さらに、紐が体に食い込むのを防いでくれるので、着ていて楽なんですよ。
1. なぜ寸胴な体型にする必要があるの?
着物は直線裁ちで作られた平面的な衣服です。そのため、体に凹凸があると、余った生地がシワになってたるんでしまいます。
特にウエストのくびれや、胸の上、背中のくぼみなどは、生地が浮きやすいポイントです。ここを埋めてあげることで、着物が体にピタッと沿うようになります。
寸胴にすることで、帯も安定しやすくなります。「帯が下がってきて苦しい…」という悩みも、実は補正不足が原因だったりするんです。
2. 家にあるフェイスタオルで準備できること
専用の補正パッドも売っていますが、最初は家にあるタオルで十分です。
使い古した薄手のフェイスタオルが一番使いやすいですよ。新品のふかふかしたタオルだと厚みが出すぎてしまうので、温泉でもらうような薄いタオルがベストです。
これを畳んで、くびれの部分に当てるだけ。特別な道具を買わなくても、家にあるもので工夫できるのが着物の良いところですね。
3. タオルを入れる主な場所と枚数の目安
体型は人それぞれですが、補正を入れる基本的な場所は決まっています。自分の体を鏡で見ながら、凹んでいるなと思うところに足していきましょう。
補正タオルの目安
- ウエスト周り
- 胸の上(鎖骨の下あたり)
- 背中の腰のくぼみ
ウエストは細長いタオルをぐるりと巻くと簡単です。胸の上は、バストとの段差を埋めるように小さなタオルを。背中のくぼみには、畳んだタオルを当てます。
「ちょっと入れすぎかな?」と思うくらいでちょうど良いことが多いです。最初は多めに入れてみて、苦しくないか確認しながら調整してみてくださいね。
和装ブラジャーやショーツは専用が良い?
「普段の下着じゃダメなの?」というのは、誰もが一度は思う疑問です。
結論から言うと、できれば専用のものを使うのがおすすめです。でも、絶対に買わなきゃいけないわけではありません。手持ちのもので代用できる場合もありますが、選び方にはコツがあります。
1. ワイヤー入りブラジャーが適さない理由
いつものワイヤー入りブラジャーは、着物のときは避けたほうが無難です。
理由は2つあります。ひとつは、バストを「寄せて上げる」機能が、着物の着付けには邪魔になってしまうから。バストが高いと、その分、帯の上に胸が乗っかるような形になり、太って見えたり、襟元が崩れやすくなったりします。
もうひとつは、ワイヤーが当たって痛くなること。着物は帯や紐で体を締め付けるので、ワイヤーが肌に押し付けられて、時間が経つにつれて苦しくなってしまうんです。
2. 和装ブラジャーが胸をなだらかにする効果
和装ブラジャーは、胸のボリュームを抑えて、なだらかに整えてくれる設計になっています。
これをつけると、胸元のラインがすっきりして、襟合わせがとてもきれいになります。「鳩胸(はとむね)」のような形を作るのが理想的なんです。
また、金具を使っていないものが多いので、締め付け感がなく楽に過ごせます。「一度使ったら手放せない」という声が多いのも納得の快適さですよ。
3. ショーツはラインが出にくいデザインを選ぶ
ショーツに関しては、普段のものでも大丈夫です。
ただし、いくつか注意点があります。着物はヒップラインが意外と目立つので、レースの凹凸が響かないシンプルなデザインや、シームレスタイプが良いでしょう。
また、股上が浅すぎるローライズタイプは、お手洗いのときに不便なことがあります。おへそくらいまである深めのタイプの方が、帯の下までしっかりカバーできるので安心です。
インナーを着る正しい順番と手順
ここまでいろいろなアイテムを紹介しましたが、実際に着るときはどんな順番になるのでしょうか。
順番を間違えると、あとで直すのが大変です。シンプルな流れを頭に入れておきましょう。
1. 肌着から補正までの流れ
まずは一番下から順に重ねていきます。
着る順番
- 和装ブラジャー(またはカップ付きインナー)
- 肌襦袢(またはワンピース肌着)
- 裾よけ(ワンピースタイプなら不要)
- 足袋(たび)
- 補正タオル
意外と忘れがちなのが「足袋」です。補正や長襦袢を着たあとだと、前かがみになるのが苦しくて履きにくくなってしまいます。肌着を着た直後、まだ帯を締める前に履いておくのが鉄則です。
2. 長襦袢をきれいに着付けるポイント
補正まで終わったら、いよいよ長襦袢です。
長襦袢を着るときは、「衣紋(えもん)」を抜くことを意識しましょう。これは、後ろの襟を首から少し離すことです。こぶし一つ分くらい空けると、首筋がすっきり見えて色っぽい着姿になります。
前側は、喉のくぼみが隠れるくらいの位置で合わせます。長襦袢がピシッと決まれば、その後の着物も自然ときれいに着られますよ。
暑い日や寒い日のインナー調整法
着物は季節に合わせて素材を変えますが、インナーも同じです。
見えない部分で体温調節をするのが、着物上級者への近道です。「我慢して着る」のではなく、工夫して快適に過ごしましょう。
1. 夏は麻や吸水速乾素材で涼しく過ごす
夏の着物はとにかく暑さとの戦いです。帯周りは何重にも布が重なるので、蒸れやすくなります。
そんなときは、麻(リネン)の肌着が最高です。汗を吸ってもすぐに乾くので、肌に張り付かずサラサラしています。
また、ユニクロのエアリズムのような吸水速乾素材のステテコを、裾よけの代わりに履くのもおすすめです。内股の汗を吸ってくれるので、股ずれも防げますよ。
2. 冬は発熱素材やレギンスを活用する
逆に冬は、襟元や袖口、裾から冷たい風が入ってきます。
ヒートテックのような発熱素材のインナーシャツを着るのもアリです。ただし、着物の襟元から見えないように、首回りが大きく開いたデザイン(UネックやVネックの深め)を選んでください。袖も、着物の袖口から出ないように七分袖や五分袖が安心です。
下半身は、レギンスやスパッツを履いても大丈夫。足袋の下に履く「足袋インナー」や「足袋っくす」という重ね履き用の靴下も温かいですよ。
手持ちの洋服インナーで代用する場合
「たまにしか着ないから、専用のものを買うのはちょっと…」という方もいますよね。
そんなときは、手持ちの洋服インナーで代用しても構いません。いくつかのポイントさえ気をつければ、十分に役目を果たしてくれます。
1. 襟ぐりが深く開いたキャミソールを選ぶ
トップスの代用で一番大切なのは、やっぱり襟ぐりです。
着物は後ろの襟(衣紋)を抜くので、背中側が大きく開いています。普通のTシャツやタンクトップだと、背中から丸見えになってしまい、せっかくの着物姿が台無しになってしまいます。
前後ともに、ぐっと深く開いているキャミソールを選びましょう。カップ付きのものなら、和装ブラの代わりにもなって一石二鳥ですね。
2. 静電気が起きにくい素材に注意する
裾よけの代用としてペチコートなどを使う場合、素材に注意が必要です。
ポリエステルなどの化学繊維は静電気が起きやすく、着物の裾が足にまとわりつく原因になります。特に冬場はパチパチして不快ですし、埃も吸い寄せてしまいます。
できれば、静電気が起きにくい「キュプラ」素材や、綿素材のものを選ぶのがおすすめです。もし化学繊維のものを使うなら、静電気防止スプレーをひと吹きしておくと安心ですよ。
準備するならセットと単品どちらが便利?
これから道具を揃えるなら、セットで買うか、必要なものだけ単品で買うか迷いますよね。
どちらにもメリットがあるので、自分の状況に合わせて選んでみてください。
1. 最初は着付け小物セットが安心な理由
着付け教室に通い始める方や、一度に全部揃えたい方には、セット商品が便利です。
「着付け小物セット」として売られているものには、肌着、裾よけ、腰紐、伊達締め、帯板などが一通り入っています。個別に探す手間が省けますし、単品で買うよりお得な場合が多いです。
何が必要かわからないうちは、とりあえずセットを買っておけば、「あれがない!」と慌てることがありません。
2. 慣れてきたら自分好みの素材を買い足す
何度か着ているうちに、「もっと肌触りのいいものが欲しいな」「夏用の涼しいものがいいな」というこだわりが出てくるはずです。
そうしたら、単品で少し良いものを買い足していくのがおすすめです。例えば、肌着をガーゼ素材に変えてみたり、裾よけを色付きのものにしてみたり。
自分にとって快適なアイテムが見つかると、着物を着るのがもっと楽しくなりますよ。
おわりに:見えない部分こそ丁寧に
着物の下に着るものについて、肌着から補正、長襦袢までお話ししてきました。
最初はアイテムの多さに戸惑ったかもしれませんが、一つ一つの役割がわかると、「なるほど、だから必要なんだ」と納得できたのではないでしょうか。見えない部分を丁寧に整えることは、ただの身だしなみ以上の意味があります。
肌着や補正がきちんとしていると、着物が体に心地よくフィットし、長時間着ていても疲れにくくなります。そして何より、自分自身が安心して過ごせるというのが一番のメリットです。「崩れてないかな?」と心配することなく、着物でのお出かけを心から楽しめるようになりますよ。
まずは手持ちの代用品から始めてみるのも良いですし、少しずつ専用のアイテムを揃えていくのも素敵です。あなたらしい工夫で、快適な着物ライフをスタートさせてくださいね。
