浴衣のシワを綺麗に取る!家庭での正しいアイロンのかけ方と温度設定を解説

「久しぶりに浴衣を出したら、シワだらけで着られない!」そんな経験はありませんか?

せっかくの夏祭りや花火大会、パリッとした綺麗な浴衣で出かけたいですよね。でも、普段着慣れない浴衣にアイロンをかけるのは、少しハードルが高く感じるかもしれません。

「温度設定は何度?」「どこからかければいいの?」といった疑問を持つ方も多いはずです。実は、素材ごとのルールさえ知ってしまえば、家庭にある道具だけで驚くほど綺麗に仕上がります。

この記事では、浴衣のアイロンがけで失敗しないための手順やコツを、初心者の方にもわかりやすく解説します。正しい知識を身につけて、自信を持って浴衣姿を楽しみましょう。

目次

浴衣にアイロンをかけても大丈夫?

1. 洗濯表示のマークを見る

まずは、浴衣についている「洗濯表示タグ」を確認しましょう。アイロンのマークに「×」がついていなければ、家庭でアイロンをかけても問題ありません 。

最近の浴衣は家庭で洗えるものが多いですが、中には特殊な加工がされているものもあります。タグが見当たらない場合は、購入したお店に確認するか、目立たない場所で少し試してみるのが安心です。

2. 素材による違いを知る

浴衣の素材によって、熱への強さがまったく異なります。一般的に「綿(コットン)」は熱に強く、「ポリエステル」などの化学繊維は熱に弱い性質を持っています 。

素材に合わない温度でかけてしまうと、生地が溶けたり、テカテカ光ってしまう原因になります。自分の浴衣がどの素材でできているか、事前にしっかり把握しておきましょう。

3. クリーニングに出すべき状態とは?

酷い汚れやシミがある場合、アイロンの熱で汚れが定着してしまうことがあります。黄ばみや食べこぼしが見られる場合は、無理に自分で処理せずクリーニングに出すことをおすすめします。

また、高級な「絞り(しぼり)」や、金箔(きんぱく)が使われている浴衣も注意が必要です。これらは家庭でのアイロンがけが難しいため、プロに任せるのが無難です 。

準備するものは何?

1. アイロンとアイロン台

基本の道具として、アイロンとアイロン台を用意しましょう。コードレスタイプだと、広い範囲をかける際にコードが邪魔にならずスムーズに作業できます。

もしアイロン台がない場合は、厚手のバスタオルをテーブルの上に敷いて代用することも可能です。ただし、熱でテーブルが変色しないよう、タオルの厚みには十分注意してください。

2. 当て布(あてぬの)の代用品

生地を傷めないために、「当て布」は必須アイテムです。専用のものがなくても、家にある白いハンカチや手ぬぐいで十分に代用できます 。

タオルなどの表面がデコボコしたものは、生地に跡がついてしまうため避けましょう。色移りを防ぐため、無地で色の薄い綿素材の布がベストです 。

3. シワを消すための霧吹き

頑固なシワを伸ばすには、適度な水分が必要です。特に綿や麻の浴衣は、乾いた状態だとシワが伸びにくい特徴があります 。

スチーム機能を使っても良いですが、霧吹きで全体を軽く湿らせたほうが、ムラなく綺麗に仕上がることが多いです。アイロン用の仕上げ剤(スプレー糊)を使うと、よりパリッとしたプロのような仕上がりになります 。

温度設定はどうすればいい?

1. 綿(コットン)や麻の場合

綿や麻などの天然素材は熱に強いため、「高温(180℃〜210℃)」に設定します 。

しっかりと熱を加えることで、繊維の奥にあるシワまでピンと伸ばすことができます。ただし、濃い色の浴衣は高温で直接当てるとテカリが出やすいため、必ず当て布を使いましょう 。

2. ポリエステルなどの化学繊維の場合

ポリエステル素材は熱に弱く、高温でかけると溶けてしまう危険があります。必ず「中温(140℃〜160℃)」以下に設定してください 。

この素材は一度シワがつくと取れにくい一方で、強い熱を加えるとすぐに変質してしまいます。不安な場合は、まずは低温から試して様子を見るのが安全です 。

3. 金箔や絞りがある場合の注意点

生地表面に凹凸のある「絞り」や、金箔加工が施されている部分は、直接アイロンを当ててはいけません。立体感が潰れたり、箔が剥がれたりしてしまいます。

どうしてもシワが気になる場合は、アイロンを生地から少し浮かせ、スチームだけを当てるようにしましょう。直接触れさせないことが、風合いを守る最大のポイントです 。

以下の表に、素材別の推奨温度をまとめました。

素材推奨温度温度設定の目安備考
綿(コットン)180℃〜210℃高温しっかりシワを伸ばせる。当て布推奨。
麻(リネン)180℃〜210℃高温霧吹きで湿らせると効果的。
ポリエステル140℃〜160℃中温熱に弱い。必ず当て布を使用。
絹(シルク)80℃〜120℃低温デリケート。スチーム不可の場合あり。

失敗しないための基本ルールとは?

1. 生地の裏側からかける理由

浴衣のアイロンがけは、原則として「裏側」から行います 。

表側からかけると、摩擦で生地が光ってしまったり(テカリ)、万が一焦げた時に目立ってしまったりするからです。裏からかければ、表面の風合いを損なうことなくシワだけを綺麗に取ることができます。

2. 半乾きの状態がベストな理由

完全に乾ききった浴衣よりも、少し湿っている「半乾き」の状態のほうがシワはよく伸びます。洗濯後、干してある程度水気が飛んだタイミングで取り込むのが理想的です。

すでに乾いている場合は、霧吹きを使って全体を湿らせてから少し時間を置きましょう。水分が繊維に浸透し、スムーズにアイロンが滑るようになります 。

3. シワを増やさないアイロンの動かし方

アイロンをゴシゴシと左右に激しく動かすのはNGです。生地が引っ張られて変形したり、新たなシワを作ってしまう原因になります。

「上から押さえて、スーッと滑らせる」イメージで動かすのがコツです。一方の手で生地を軽く引っ張りながらかけると、より綺麗に仕上がります 。

どこからかけ始める?(正しい順番)

1. 小さな部分から大きな部分へ

アイロンがけの基本は、「面積の狭い部分」から「広い部分」へと進めることです。広い背中などを先に綺麗にしても、細かい部分をかけている間にまたシワになってしまうからです 。

具体的には、襟(えり)や紐などの細かいパーツからスタートし、最後に袖や身頃(みごろ)といった大きな面を仕上げていきます。この順番を守るだけで、二度手間を防げます。

2. 襟(えり)などの硬い部分

最初に取り掛かるべきなのは、顔周りの印象を決める「襟」です。ここがヨレていると、全体の印象がだらしなく見えてしまいます 。

襟には芯が入っていて生地が厚くなっているため、しっかり力を加えてプレスしましょう。襟先までピンと一直線になるよう意識してください。

3. 紐(ひも)などの細かい部分

次に、腰紐などの付属部分をかけます。これらは普段見えない部分ですが、結び目のシワが残っていると着付けの際に扱いづらくなります。

細長い紐はアイロン台の上で転がすようにして、軽く熱を通しておくだけで十分です。意外と忘れがちなポイントなので、最初に済ませておきましょう。

襟(えり)をきれいに仕上げるには?

1. 襟の裏側をピンと張る方法

襟をかけるときは、片手で端を持って強く引っ張りながらアイロンを走らせます。生地がたるんだ状態でかけると、余計なシワがプレスされてしまいます。

裏側からかけることで、表に縫い目や折り目の跡が響くのを防げます。ここは浴衣の中で最も目立つ「顔」とも言える部分なので、特に丁寧に行いましょう 。

2. 襟山(えりやま)を潰さないコツ

首の後ろに当たる部分(襟山)は、ふっくらとした立体感を残すのが美しく見せるコツです。折り目をペチャンコにプレスしすぎないよう注意しましょう。

アイロンの先端を使い、折り目のキワまで攻めるのではなく、優しく形を整える程度に留めます。そうすることで、着た時に首元が柔らかく馴染みます。

3. 視線が集まる胸元の整え方

胸元の襟合わせ部分は、着ている時に一番視線が集まる場所です。ここにシワがあると、どうしても疲れた印象を与えてしまいます。

スプレー糊(のり)を軽く吹きかけてからかけると、ハリが出て清潔感がアップします 。ピシッとした襟元は、浴衣姿をワンランク上の美しさに引き上げてくれます。

袖(そで)はどうやってかける?

1. 袖の形をきれいに整える置き方

袖をアイロン台に乗せるときは、縫い目に沿って平らに広げます。手のひらで一度なでて、中の布が折れ曲がっていないか確認しましょう 。

袖は面積が広いため、裏と表の生地がずれたままかけると、変な場所に折り目がついてしまいます。面倒でも一度綺麗に整えてからアイロンを置くのが近道です。

2. 袖山(そでやま)の折り目の付け方

袖の一番上のライン(袖山)は、ピシッと折り目をつけるとかっこよく仕上がります。ここは遠慮せず、しっかりプレスして大丈夫です。

折り目がまっすぐ通っていると、腕を下ろした時のシルエットが非常に美しくなります。逆にここが曖昧だと、なんとなく締まりのない印象になってしまいます。

3. 袋状になっている袂(たもと)の扱い

袖の下の袋状になっている部分(袂)は、丸みのあるカーブを描いています。アイロンの先端をうまく使って、隅々まで熱を行き渡らせましょう。

角の部分にホコリが溜まりやすいので、アイロンがけのついでに取り除いておくと良いでしょう。広い面は滑らせるように、角は小刻みに動かすのがポイントです。

広い部分をシワなく仕上げるには?

1. 背中側(後身頃)からかける手順

いよいよ一番面積の広い「身頃(胴体の部分)」です。まずは背中側(後身頃)から始めましょう 。

背中心の縫い目を基準にして、内側から外側に向かってアイロンを動かします。このとき、すでに綺麗にした襟や袖を押し潰さないよう、アイロン台の外に逃がしながら作業します。

2. 前側(前身頃・おくみ)をかける時の注意

最後に体の前側(前身頃とおくみ)をかけます。ここは着付けた時に正面から見える重要なパーツです。

裾(すそ)の方から肩に向かって、下から上へと進めていくとスムーズです。特に膝のあたりは座りジワができやすいので、念入りに伸ばしておきましょう 。

3. 縫い目が重なる部分のコツ

脇や裾など、布が何枚も重なっている「縫い代」の部分は、段差ができやすくなっています。

段差の上から強くプレスすると、表側に縫い代の跡(あたり)が出てしまうことがあります。タオルの端などを段差の下に敷いてクッションにすると、跡がつかず綺麗に仕上がります。

アイロンがない時はどうする?

1. 衣類スチーマーを活用する方法

もしアイロン台がない場合は、ハンガーにかけたまま使える「衣類スチーマー」が便利です。蒸気の力で繊維をふっくらさせ、自然にシワを伸ばしてくれます。

生地を軽く下に引っ張りながら、スチームをゆっくり当てていきます。プレスするわけではないので、ふんわりとした柔らかい仕上がりになります。

2. お風呂場の蒸気を使う裏技

出先やホテルなどで道具が全くない時は、入浴後のお風呂場に一晩干しておきましょう。浴室に残った蒸気が、スチーマーと同じ役割を果たしてくれます。

翌朝、風通しの良い場所で湿気を飛ばせば、細かいシワ程度なら気にならなくなります。手間もかからず、生地も傷めないおすすめの方法です。

3. シワ取りスプレーの効果的な使い方

市販の「シワ取りスプレー」も緊急時の強い味方です。シワが気になる部分にしっとりするくらいスプレーし、手でパンパンと叩いて伸ばします。

その後、ハンガーにかけて完全に乾くまで待ちます。アイロンほど完璧にはなりませんが、着用には十分なレベルまでシワを目立たなくできます。

かけ終わった後はどうする?

1. 湿気を飛ばすための「粗熱取り」

アイロンがけ直後の浴衣は、熱と湿気を含んでいます。このまま畳んでしまうと、湿気がこもってカビの原因になったり、新たなシワができたりします 。

ハンガーにかけて、しばらく部屋の中で吊るしておきましょう。生地が冷めて乾いた状態(粗熱が取れた状態)になるまで待つのが鉄則です 。

2. ハンガーにかける時のポイント

この時、洋服用の細いハンガーだと肩の部分に変な跡がついてしまいます。できれば着物用の「着物ハンガー」を使い、袖まで一直線に広げて干すのが理想です。

着物ハンガーがない場合は、突っ張り棒や物干し竿に袖を通して干す「竿干し」でも代用できます。とにかく袖をだらんと下げないことが大切です。

3. 次に着るまで美しさを保つ畳み方

完全に熱が取れたら、正しい手順で「本畳み(ほんだたみ)」をします。縫い目に沿ってパタパタと折っていくだけなので、慣れれば簡単です 。

正しく畳めば、折り目がそのままプレスの役割を果たし、次回着る時まで綺麗な状態をキープできます。適当に畳むのが一番のシワの原因ですので、最後まで気を抜かずに仕上げましょう。

まとめ

浴衣のアイロンがけは、少しの手間と正しい知識があれば、誰でも家庭で綺麗に仕上げることができます。

大切なポイントは、以下の3つでしたね。

  • 素材に合った温度設定(綿は高温、ポリエステルは中温)を守る
  • 必ず当て布を使い、裏側からかける
  • 小さい部分(襟)から広い部分(身頃)への順番で進める

最初は難しく感じるかもしれませんが、一度やってみると意外とシンプルな作業だと気づくはずです。

自分で手入れをした浴衣には、不思議と愛着が湧いてくるものです。パリッとした浴衣に袖を通した時の高揚感は、何にも代えがたいものがあります。ぜひ今度の週末、時間に余裕を持ってチャレンジしてみてくださいね。

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