正絹の着物は自宅で洗える?失敗しない洗濯方法と縮ませないコツを解説

「正絹の着物は自宅で洗えるの?」と疑問に思ったことはありませんか。毎回クリーニングに出すと費用もかさむため、もし自分で手入れができれば嬉しいですよね。

実は、正しい手順と知識さえあれば、正絹の着物も自宅での洗濯方法を実践することが可能です。この記事では、大切な着物を縮ませずにさっぱりと洗うための具体的なコツを解説していきます。

目次

正絹の着物は自宅で洗濯できるのか?

「正絹は水に弱い」とよく言われますが、絶対に洗えないわけではありません。ただし、無条件に洗濯機へ放り込んでいいわけではなく、生地の状態や仕立て方を見極める必要があります。

まずは、手持ちの着物が自宅洗いに向いているかどうかを判断する基準を知っておきましょう。これを知らないと、取り返しのつかない失敗をしてしまうかもしれません。

1. 洗える着物と洗えない着物の見分け方

すべての着物が同じように作られているわけではありません。まずは洗濯表示タグや証紙を確認して、素材が何であるかを確実に把握することが大切です。

ポリエステルなどの化学繊維であれば気兼ねなく洗えますが、正絹の場合は慎重な判断が求められます。特に以下の加工が施されているものは、自宅洗いを避けたほうが無難です。

  • 金箔や銀箔の装飾があるもの
  • 刺繍が施されているもの
  • 絞り加工があるもの

これらの装飾は水につけることで剥がれたり、形が崩れたりするリスクが非常に高いです。大切な装飾を守るためにも、無理な洗濯は控えましょう。

2. 自宅での洗濯が向いているケース

では、どのような正絹の着物なら自宅で洗えるのでしょうか。基本的には、縮みや風合いの変化をある程度許容できるものが対象になります。

たとえば、普段着として着潰すつもりの紬(つむぎ)や、リサイクルショップで安価に手に入れた小紋などが挙げられます。

  • 古い紬の着物
  • 普段使いの小紋
  • 浴衣感覚で着る単衣

これらは多少風合いが変わっても「味」として楽しめることが多いです。礼装用や高価な振袖などは、プロに任せるのが賢明な判断と言えるでしょう。

洗濯を始める前に確認すべき着物の状態

いきなり水につける前に、必ずチェックしておきたいポイントがいくつかあります。この事前確認を怠ると、色移りや激しい型崩れの原因になってしまいます。

着物を広げて、これから行う洗濯に耐えられる状態かどうかをじっくり観察してみてください。面倒に感じるかもしれませんが、この一手間が仕上がりを大きく左右します。

1. 色落ちするかどうかのテスト方法

正絹の着物は染料が水に溶け出しやすい性質を持っています。洗っている最中に色が流れ出し、他の部分に移ってしまう「色泣き」という現象が起こることがあるのです。

これを防ぐために、洗濯前に必ず色落ちテストを行いましょう。白い布に少し水を含ませて、着物の目立たない部分をトントンと叩いてみます。

  • 下前(着た時に隠れる部分)の裾
  • 袖口の内側

もし白い布に色がつくようであれば、自宅での水洗いは危険です。その場合は、残念ですが専門店に相談することをおすすめします。

2. シミや汚れがひどい箇所の確認

全体を洗う前に、特に汚れている部分がないかを確認します。襟元や袖口、裾などは皮脂や泥汚れがつきやすい場所です。

古いシミや黄変してしまった汚れは、普通に洗っても落ちないことがほとんどです。無理に落とそうとして生地を傷めることのないよう、汚れの種類を見極めましょう。

  • ファンデーションなどの油汚れ
  • お茶や汗などの水溶性の汚れ
  • 時間の経った茶色いシミ

油汚れにはベンジンなどが有効ですが、水洗いだけで落とそうと強くこするのは厳禁です。あくまで「全体の汗抜き」を目的としましょう。

3. 裏地の有無と仕立て方のチェック

着物に裏地がついている「袷(あわせ)」か、裏地のない「単衣(ひとえ)」かによって、洗濯の難易度が変わります。

袷の着物は表地と裏地で縮率(縮む割合)が異なるため、洗うと袋状にたるんでしまう「袋入り」という状態になりやすいのです。

  • 袷(裏地あり)
  • 単衣(裏地なし)

初心者が自宅で洗うなら、構造がシンプルで乾きやすい単衣の着物から挑戦するのがおすすめです。袷を洗う場合は、多少の型崩れを覚悟する必要があります。

正絹を洗うために必要な道具の準備

着物を洗うには、一般的な洗濯用品ではなく、生地に優しい専用の道具を用意するのがベストです。特別な道具といっても、ドラッグストアやホームセンターで揃うものがほとんどです。

正絹はデリケートな素材なので、道具選びを間違えると生地を傷める原因になります。しっかりと準備を整えてから作業に入りましょう。

1. おしゃれ着洗い用の中性洗剤の選び方

普通の洗濯洗剤は洗浄力が強すぎるため、アルカリ性のものが多く含まれています。しかし、正絹はタンパク質でできているため、アルカリ性に弱いという特徴があります。

必ず「中性洗剤」と書かれた、おしゃれ着洗い用の洗剤を選んでください。これを使うことで、生地へのダメージを最小限に抑えることができます。

  • エマール
  • アクロン
  • その他の中性洗剤

成分表示を見て「中性」と書かれていることを確認しましょう。蛍光増白剤が入っていないことも重要なポイントです。

2. 着物専用ハンガーや大きめのタオルの用意

着物を干す際、普通の洋服ハンガーを使うと肩の部分に変な跡がついてしまいます。また、袖がだらりと垂れてしまい、乾きにくくシワの原因にもなります。

袖までしっかりと広げて干せる着物専用ハンガーが必要です。もし持っていない場合は、物干し竿に直接通して干す方法もあります。

  • 着物ハンガー(帯掛け付きが便利)
  • バスタオル(2〜3枚)
  • 洗濯ネット(着物が入る特大サイズ)

タオルは脱水の工程で使用するため、吸水性の良い大きめのバスタオルを複数枚用意しておくとスムーズです。

3. アイロンと当て布の役割

洗濯後の仕上げにはアイロンが欠かせません。水を含んで縮んだ繊維を、熱と蒸気の力で整える必要があるからです。

直接アイロンを当てると、生地がテカってしまったり(アタリが出る)、焦げたりする恐れがあります。必ず当て布を用意しましょう。

  • スチーム機能付きアイロン
  • 綿の白い布(手ぬぐいなど)

当て布は色柄物ではなく、白い無地の木綿が最適です。ハンカチなどでも代用できますが、薄手で色のないものを選んでください。

生地の縮みを防ぐための予洗いと準備

いよいよ洗濯に入りますが、いきなり水に浸けるのはちょっと待ってください。事前の準備が洗濯の成功率を大きく上げます。

特に正絹は水につかっている時間が長ければ長いほど縮みやすくなります。手際よく作業を進めるためにも、予洗いと畳み方をマスターしておきましょう。

1. 襟元や袖口の汚れを部分洗いする方法

全体を洗う前に、汚れが目立つ襟元や袖口だけ先に予洗いしておきます。洗剤を少しつけたスポンジや柔らかいブラシで、優しくトントンと叩くように汚れを浮かせます。

この時、ゴシゴシと擦ってしまうと生地が毛羽立ってしまいます。「洗う」というよりは「汚れを移す」イメージで行うのがコツです。

2. 着物をきれいに畳んでネットに入れる理由

着物を洗濯ネットに入れる際は、適当に丸めるのではなく「袖畳み(そでだたみ)」にしてから入れます。こうすることで、洗っている最中に生地同士が擦れるのを防げます。

ネットの中で着物が動かないよう、ネットのサイズに合わせて着物を畳むのがポイントです。

  • 袖畳みにする
  • ネットの余った部分は結ぶかゴムで留める
  • 中で着物が泳がないようにする

ネットが大きすぎると中で着物が動き回り、シワや型崩れの原因になります。ジャストサイズになるよう調整しましょう。

3. 洗浄液の温度設定と水温の重要性

洗う水の温度も非常に重要です。汚れを落としたいからといってお湯を使うのは逆効果です。お湯を使うと縮みが激しくなったり、色落ちが進んだりしてしまいます。

正絹を洗うときは、常温の水か、少し冷たいくらいの水を使うのが鉄則です。

  • 30度以下の水
  • 常温の水道水

お風呂の残り湯などは温度が高すぎることがあるので避けましょう。冷たい水の方が繊維が引き締まり、縮みを抑える効果が期待できます。

正絹の着物を優しく手洗いする手順

準備が整ったら、実際に洗っていきましょう。ここでのポイントは「とにかく手早く、優しく」です。

時間をかけると、どんどん生地が水を吸って重くなり、扱いづらくなります。迷わずサッと洗うための手順を確認しましょう。

1. 容器に水を張り洗剤を溶かす手順

洗面器や洗面台、あるいはお風呂の浴槽などに水を張り、規定量の中性洗剤をよく溶かします。

着物を入れてから洗剤を入れると、原液が直接生地にかかり、色落ちの原因になることがあります。必ず先に洗浄液を作っておくことが大切です。

2. 力を入れずに押し洗いをするコツ

畳んでネットに入れた着物を、洗浄液の中に沈めます。そして、手のひらで優しく上から押して、浮いてきたらまた押す「押し洗い」を繰り返します。

絶対に揉んだり、雑巾のように絞ったりしてはいけません。繊維が潰れてしまい、光沢が失われてしまいます。

  • 優しく沈める
  • ゆっくり浮かせる
  • 20回〜30回程度繰り返す

水を通すだけで汗などの水溶性の汚れは十分に落ちます。力を入れすぎないよう、優しく接してあげてください。

3. 洗う時間を短く済ませる理由

水につけている時間は、予洗いを含めても5分〜10分以内に収めるのが理想です。長時間のつけ置きは、色落ちや縮みのリスクを高めるだけです。

「もっときれいにしたい」という気持ちはわかりますが、正絹に関しては「サッと洗ってサッと上げる」のが正解です。手際の良さが仕上がりを決めます。

洗剤成分を残さないためのすすぎの工程

洗いが終わったら、次はすすぎです。洗剤成分が残っていると、変色やカビの原因になります。

しかし、ここでも時間をかけすぎたり、乱暴に扱ったりするのは禁物です。生地をいたわりながら、しっかりと泡を切る方法を見ていきましょう。

1. きれいな水に入れ替えてすすぐ回数

濁った水を捨て、新しいきれいな水を溜めます。洗いと同じように、押し洗いの要領で洗剤を押し出していきます。

水を2〜3回入れ替えて、泡が出なくなるまですすぎを行います。流水を直接当てるのは生地への負担が大きいので、溜めすすぎが基本です。

  • 水を捨てる
  • 着物を軽く押して水を切る
  • 新しい水を入れる

この繰り返しを手早く行います。水を含んだ着物は非常に重いので、持ち上げる際は注意が必要です。

2. 柔軟剤を使用する場合のタイミング

必須ではありませんが、最後のすすぎ水に柔軟剤を少し入れると、静電気防止やシワ予防に役立ちます。

ただし、入れすぎると着物の風合いが柔らかくなりすぎてしまい、「コシ」がなくなってしまうこともあります。規定量よりも少なめに入れるのがコツです。

3. 水の中で広げずにすすぐポイント

すすぎの最中、汚れが落ちたか気になって着物を広げたくなるかもしれません。しかし、水を含んだ正絹は強度が落ちているため、広げるとその重みで糸が切れたり縫い目が広がったりします。

ネットに入れたまま、畳んだ状態で最後まで作業を進めましょう。

  • ネットから出さない
  • 持ち上げるときは両手で下から支える
  • 絶対にねじらない

水の中での着物は、私たちが思っている以上にデリケートな状態にあります。

水分を安全に取り除く脱水のやり方

洗濯機でギュインギュインと脱水するのは絶対にNGです。強い遠心力は正絹にとって大敵です。

基本はタオルドライで優しく水分を吸い取る方法をとります。少し手間はかかりますが、ここを丁寧に行うことで、干した時のシワが劇的に減ります。

1. 洗濯機を使わずタオルドライする手順

洗い終わった着物をネットから出し(あるいはネットのまま)、用意しておいたバスタオルの上に広げます。

上からさらに別のバスタオルを被せて、サンドイッチ状にします。そして上から優しく押して、水分をタオルに移していきます。

2. バスタオルで挟んで水気を吸い取る方法

さらに効率よく脱水するために、バスタオルと一緒に海苔巻きのようにくるくると巻いていく方法も有効です。

巻いた状態で上から軽く押すと、内側の水分までしっかりとタオルが吸い取ってくれます。これをタオルを変えて2回ほど行うと、水垂れしない程度まで脱水できます。

  • 着物を広げる
  • タオルを挟んで巻く
  • 上から優しく押す

この方法なら生地を傷めることなく、余分な水分だけを取り除くことができます。

3. どうしても洗濯機を使う場合の脱水時間

タオルドライだけでは重くて干せない場合など、どうしても洗濯機の脱水機能を使いたい時もあるでしょう。その場合は、時間を極限まで短く設定します。

目安は「10秒〜30秒」程度です。洗濯機が回り始めて最高速度に達したら、すぐに停止ボタンを押すくらいの感覚で構いません。

完全に水気を切る必要はありません。水が滴り落ちるくらいの方が、その重みでシワが伸びてきれいに仕上がることもあります。

型崩れや変色を防ぐ干し方のポイント

脱水が終わったら、すぐに干します。濡れたまま放置すると、あっという間にシワが定着してしまいます。

干す場所や干し方にも、着物ならではのルールがあります。洋服と同じように干してしまうと、残念な結果になりかねません。

1. 直射日光を避けて陰干しをする理由

正絹は紫外線に非常に弱く、日光に当たるとすぐに変色(黄変)してしまいます。必ず直射日光の当たらない、風通しの良い日陰に干しましょう。

室内干しでも問題ありませんが、エアコンの風が直接当たる場所は避けてください。乾きムラができてしまいます。

2. 着物ハンガーにかけて形を整える手順

用意しておいた着物ハンガーにかけ、袖を左右にしっかりと広げます。この時、襟の部分も立てるようにして形を整えると、乾きが早くなります。

ハンガーが傾いていないか確認しましょう。傾いていると型崩れの原因になります。

3. 干している最中にシワを伸ばすコツ

干した直後の濡れている状態で、手のひらで挟んでパンパンと叩く「手アイロン」を行います。

縫い目を引っ張り、シワを伸ばすように整えておくと、乾いた後のアイロンがけが非常に楽になります。縮みやすい部分も、この段階で少し伸ばしておくと良いでしょう。

  • 縫い目を軽く引っ張る
  • 叩いてシワを伸ばす
  • 全体のバランスを見る

このひと手間が、仕上がりの美しさを大きく左右します。

仕上げに欠かせないアイロンのかけ方

完全に乾いてしまう前に取り込むのが、きれいに仕上げるプロの技です。生乾きの状態の方が、アイロンでシワを伸ばしやすいからです。

もし完全に乾いてしまった場合は、霧吹きなどで少し湿らせてから行うときれいに仕上がります。

1. 半乾きの状態でアイロンをかけるメリット

正絹の繊維は、適度な水分を含んでいる状態の方が柔軟性があり、熱セットの効果が高まります。

完全に乾ききったパサパサの状態だと、頑固なシワが伸びにくく、無理に伸ばそうとして生地を傷めることになりかねません。

2. 必ず当て布をして低温でかける理由

アイロンの温度は「中温」または「低温(シルク設定)」にします。スチームを使うと縮みが戻りやすくなりますが、水滴が落ちるとシミになるので注意が必要です。

必ず当て布をして、その上からアイロンを滑らせます。一箇所に長時間当て続けるのは避けましょう。

3. 縮んだ部分を少しずつ伸ばすテクニック

洗濯で多少縮んでしまった部分は、アイロンの熱と蒸気を利用して、引っ張りながらプレスすることで修正できる場合があります。

縦方向、横方向に少しずつ生地を伸ばすイメージでアイロンをかけていきます。ただし、強く引っ張りすぎると縫い糸が切れるので、力加減には注意してください。

まとめ

正絹の着物を自宅で洗うことは、少し勇気がいるかもしれませんが、ポイントさえ押さえれば決して不可能ではありません。

大切なのは、「洗えるものかどうかを見極めること」と、「優しく短時間で洗うこと」です。自分で手入れができれば、着物を着る機会がもっと増え、和装ライフがより身近で楽しいものになるはずです。

もし自分で洗うのが不安な場合や、失敗したくない大切な一枚については、無理せず専門のクリーニング(悉皆屋)に相談することをおすすめします。着物の状態に合わせて、最適なケア方法を選んであげてくださいね。

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