親族の結婚式など、人生の節目で着ることになる黒留袖。普段着慣れないものだからこそ、準備をしていると「あれ?荷物が入りきらない」と焦ってしまうことがあります。そんな時に頭をよぎるのが、「家にある紙袋でもいいかな?」「手持ちのブランドバッグなら大丈夫?」という疑問ではないでしょうか。
実は、黒留袖に合わせるサブバッグには明確なマナーが存在します。なんとなく選んだバッグが原因で、せっかくの晴れ姿が「マナー知らず」と見られてしまったら悲しいですよね。この記事では、黒留袖のサブバッグとして選んではいけないNG例と、自信を持って持てるバッグの選び方をやさしく解説します。
黒留袖を着るときサブバッグは必要?
結論から言うと、黒留袖を着る際にはサブバッグを用意しておくことを強くおすすめします。着物用のバッグは見た目の美しさを優先して作られているため、想像以上に容量が少ないからです。
当日になって「荷物が入らない!」と慌てないためにも、メインのバッグとは別にもう一つ、荷物を入れるための袋が必要になります。なぜ必要なのか、その具体的な理由を見ていきましょう。
1. 正装用のバッグは意外と物が入らない
黒留袖に合わせる礼装用のバッグを手に取ったことはありますか?とても上品で素敵ですが、実際に物を入れようとすると驚くほど小さいことに気づくはずです。
あの小さなバッグには、最低限の必需品しか入りません。
- 小さめの財布
- スマートフォン
- ハンカチ
これらを詰め込むだけで、もうパンパンになってしまうことがほとんどです。無理やり詰め込むとバッグの形が崩れてしまいますし、いざ取り出そうとした時に中身が飛び出してしまうなんてことにもなりかねません。スマートな所作のためにも、容量には余裕を持たせておきたいですね。
2. 荷物が増えたときの安心感
結婚式の当日は、行きよりも帰りの方が荷物が増えることが多いものです。引き出物は配送にするケースが増えましたが、それでも細々とした記念品やパンフレットを受け取ることがあります。
また、会場内での移動中や待ち時間に、ちょっとした飲み物や予備のマスクを持っておきたいと思うこともあるでしょう。そんな時、全てを手に抱えて歩くのは黒留袖の優雅な姿には似合いません。
「入らなかったらどうしよう」と心配しながら過ごすよりも、あらかじめサブバッグを用意しておくことで、心に余裕を持って式に参列できますよ。
紙袋をサブバッグにするのがNGな理由
「ただ荷物を入れるだけだし、綺麗な紙袋ならいいのでは?」と思うかもしれません。デパートや有名ブランドのしっかりした紙袋なら、見た目も悪くない気がしますよね。
しかし、フォーマルな場において紙袋をサブバッグとして使うのは、基本的にNGとされています。どんなに高級なブランドの紙袋であっても、避けたほうが無難な理由があるのです。
1. フォーマルな場にふさわしくないカジュアル感
紙袋はあくまで「購入した商品を家まで持ち帰るための袋」であり、本来は運搬用の道具です。そのため、どんなに綺麗でも「使い捨て」のイメージが拭えません。
黒留袖は、既婚女性が着用する着物の中で最も格が高い「第一礼装」です。最高級の装いである黒留袖に対して、カジュアルな紙袋を持ってしまうと、全体のバランスが崩れてチグハグな印象を与えてしまいます。
| バッグの種類 | 黒留袖との相性 | 印象 |
|---|---|---|
| フォーマルサブバッグ | ◎ | 上品でマナーを心得ている |
| ブランド紙袋 | × | カジュアルすぎて場違い |
| お店のショッパー | × | 間に合わせ感が強い |
このように比較してみると、やはり紙袋は避けるべきだということが分かりますね。
2. 音がカサカサして雰囲気を壊す恐れ
意外と見落としがちなのが、紙袋特有の「音」の問題です。紙素材はどうしても、動くたびに「ガサガサ」「カサカサ」という音がしてしまいます。
結婚式には、厳粛な挙式や感動的なスピーチなど、静寂が求められるシーンがたくさんあります。そんな時に足元からガサゴソと音が鳴ってしまうと、周囲の雰囲気を壊してしまうかもしれません。
布製のサブバッグなら、衣擦れの音にも馴染み、静かな場面でも音を立てる心配がありません。周囲への配慮という意味でも、素材選びはとても大切なのです。
ブランドロゴが大きく入ったバッグがNGな理由
「紙袋がダメなら、きちんとした革のブランドバッグなら良いのでは?」と考える方もいるでしょう。特に海外ハイブランドのバッグは高価ですし、恥ずかしくないと思われがちです。
しかし、黒留袖に合わせる場合、ブランドのロゴが大きく主張しているものは避けるのがマナーです。なぜ高価なバッグでもNGになってしまうのでしょうか。
1. 着物の品格よりもバッグが目立ってしまう
和装の美しさは「調和」にあります。黒留袖の柄行きや帯の美しさを引き立てることが大切なのに、大きなロゴが入ったバッグは視線を奪ってしまいます。
特に、モノグラム柄や大きな金具のロゴがついているバッグは、どうしても洋風の主張が強くなります。着物の奥ゆかしい雰囲気と、ブランドの強い主張が喧嘩してしまうのです。
「良いものを持っている」というアピールよりも、「場の空気を読んでいる」という謙虚さが、着物姿をより美しく見せてくれますよ。
2. 主役よりも目立つ可能性がある
結婚式の主役はあくまで新郎新婦です。参列者は、新郎新婦をお祝いし引き立てる立場にあります。
一目でどこのブランドか分かるような派手なバッグは、場合によっては「自分を見てほしい」という自己顕示欲として受け取られてしまうことがあります。特に親族として出席する場合は、ゲストを迎える側としての節度が求められます。
誰が見ても控えめで上品なものを選ぶことが、結果としてあなた自身の評価を高めることにつながります。
他にもある?黒留袖に合わせるべきではない素材
紙袋やロゴ以外にも、素材そのものがNGとされるケースがあります。普段使いのバッグとしては優秀でも、冠婚葬祭のルールに照らし合わせると不適切なものがあるのです。
特に動物由来の素材や、極端にカジュアルな素材には注意が必要です。知らずに持っていくと、年配の方やマナーに詳しい方から眉をひそめられてしまうかもしれません。
1. 殺生を連想させる動物の革やファー
革製品や毛皮(ファー)は、結婚式というお祝いの席では避けるべき素材の代表格です。これには古くからの理由があります。
- 動物の革(クロコダイルやヘビ革など)
- ファー素材
- アニマル柄
これらの素材は「殺生(生き物を殺すこと)」を連想させるため、縁起が悪いとされています。最近ではシンプルな牛革などは許容されることもありますが、黒留袖という正装に合わせるなら避けたほうが無難です。
ファー素材も、「毛が抜ける」「飛ぶ」ことから、料理に混入する恐れがあるなど実用面でも嫌がられることがあります。
2. ビニールや麻などのカジュアル素材
夏場などは麻や綿のバッグ、あるいはビニール素材のバッグが涼しげで素敵に見えることがあります。しかし、これらはあくまでカジュアルな普段着用の素材です。
黒留袖の重厚な絹の質感に対して、これらの素材はあまりにも軽すぎます。チープな印象を与えてしまい、せっかくの着物姿が台無しになってしまいかねません。
季節感を大切にするのは着物の良いところですが、素材の「格」を合わせることを最優先に考えましょう。
黒留袖にふさわしいサブバッグの選び方
ここまで「ダメなもの」ばかりをお伝えしてきましたが、では一体どんなバッグなら正解なのでしょうか?
実は、選び方のポイントはとてもシンプルです。「着物を邪魔しないこと」を基準に選べば、まず間違いはありません。具体的にどのようなものがおすすめかを見ていきましょう。
1. 上品な光沢のある布製が基本
黒留袖に合わせるサブバッグとして最も間違いがないのは、「布製」のものです。特に、少し光沢のあるサテン地や、織りの入った生地がおすすめです。
- シャンタン生地
- サテン生地
- レース地(裏地があるもの)
これらの素材は、着物の絹の光沢とも相性が良く、上品な華やかさを添えてくれます。表面にシボ(凹凸)加工があるものも、高級感があって素敵ですね。
ポリエステルなどの化学繊維でも、見た目に光沢感があれば問題ありません。高価なものである必要はないので、質感を重視して選んでみてください。
2. 色は金や銀、白が無難
バッグの色選びも重要です。黒留袖を着る時は、足元の草履やメインのバッグも「金」や「銀」が基調になっていることが多いはずです。
サブバッグもそれに合わせて、金、銀、白、あるいは淡いベージュやクリーム色を選ぶと、全体のコーディネートがまとまります。
黒留袖だからといって、サブバッグまで黒にする必要はありません。むしろ黒一色だと喪服を連想させてしまうことがあるので、お祝いの席には明るい色を添えるのがおすすめです。
使いやすいサブバッグの大きさや形
素材や色が決まったら、次は形や大きさです。「使いやすさ」と「見た目」のバランスが良いものを選びましょう。
あまりに大きすぎると野暮ったく見えますし、小さすぎるとサブバッグの意味がありません。ちょうどよいサイズ感を知っておくと便利です。
1. A4サイズが入る大きさが便利
おすすめのサイズは、A4の書類がすっぽり入る大きさです。結婚式では、席次表やパンフレットなど、A4サイズの紙類を渡されることがよくあります。
これらを折り曲げずにしまえるサイズだと、とても重宝します。また、A4サイズなら膝の上に置いた時もそこまで邪魔にならず、スマートに見えます。
マチ(厚み)があまりに太いものはボストンバッグのように見えてしまうので、適度な薄さのスッキリとしたデザインを選びましょう。
2. マチがあって自立するタイプ
形状としておすすめなのは、底にマチがあり、床や机に置いた時に自立するタイプです。
- 底鋲がついている
- 底板が入っている
このような作りになっていると、写真撮影の際や、ちょっと荷物を置きたい時にパタンと倒れず便利です。くたっとしてしまう袋状のものよりも、きちんとした印象を与えられます。
結婚式場でのサブバッグの持ち歩きマナー
完璧なサブバッグを用意しても、当日の持ち歩き方を間違えてしまってはもったいないですよね。
会場内では、サブバッグを常に持ち歩く必要はありません。シーンに合わせて預けたり、手元に置いたりと使い分けるのが大人のマナーです。
1. 挙式会場には持ち込まずクロークへ
神聖な挙式(チャペルや神殿)には、基本的に大きな荷物は持ち込みません。サブバッグはクロークに預け、メインの礼装用バッグだけを持って参列するのが基本です。
もしサブバッグの中に貴重品が入っていて預けられない場合は、挙式中は足元に目立たないように置きましょう。膝の上に大きなバッグを抱えているのは、写真映りの面でもあまり美しくありません。
2. 披露宴会場では足元か椅子の背へ
披露宴会場では、サブバッグを手元に持っていても構いません。着席した際は、背中と椅子の背もたれの間(腰の後ろあたり)に置くのが最もスマートです。
バッグが大きくて背中に置けない場合は、足元に置くことになります。この時、先ほどお伝えした「自立するタイプ」だと倒れずに済むので安心ですね。
隣の席にはみ出さないよう、自分のスペース内に収めるよう配慮しましょう。
サブバッグに入れておくと便利な持ち物
せっかくサブバッグを持つのですから、いざという時に役立つアイテムを入れておきましょう。メインバッグに入らないけれど、あると助かるものは意外と多いものです。
「あ、持ってくればよかった」と後悔しないための、あると便利なリストをご紹介します。
1. 予備のハンカチや化粧ポーチ
結婚式は感動の涙を流すシーンも多いもの。礼装用のスワトウ刺繍などのハンカチとは別に、涙を拭くための吸水性の良いタオルハンカチを一枚入れておくと安心です。
また、着物を着ていると化粧直しのために席を立つ回数は減りますが、簡単なリップやパウダーが入った化粧ポーチは持っておきたいですよね。
- 吸水性の高いハンカチ
- ティッシュ
- 最小限のメイク道具
これらはサブバッグの定位置に入れておきましょう。
2. 招待状やデジカメ、飲み物など
受付で必要になる招待状も、意外とかさばるアイテムです。また、最近はスマホで撮影することが多いですが、デジカメを持参する場合もサブバッグが活躍します。
- 招待状
- デジタルカメラ
- 小さなペットボトルの水(水分補給用)
- 予備のマスク
特に着物は帯で締め付けられるため、喉が渇きやすいという方もいます。小さな飲み物を忍ばせておくと、体調管理にも役立ちますよ。
サブバッグがない場合の対処法
「もう明日が結婚式で、買いに行く時間がない!」という緊急事態もあるかもしれません。そんな時に使える、ピンチヒッター的な対処法もお伝えしておきます。
焦って紙袋を持っていく前に、まずは家の中に代用できるものがないか探してみましょう。
1. 風呂敷を活用するのもひとつの手
もし家に綺麗な風呂敷があれば、それをサブバッグ代わりにすることができます。風呂敷は日本の伝統的な「包む」文化の象徴であり、着物との相性は抜群です。
ちりめん素材や、縁起の良い柄の風呂敷で荷物を包めば、とても上品に見えます。使わない時は小さく畳んでメインバッグにしまえるのも、風呂敷ならではのメリットです。
2. 家族と荷物をまとめる工夫
夫婦や家族で参列する場合は、一つの大きめのバッグに荷物をまとめて、男性陣に持ってもらうという方法もあります。
男性用のフォーマルバッグや、和装用の信玄袋などに、自分のかさばる荷物を少し入れてもらうだけで随分と助かります。
会場内では必要なものだけ手元に残し、あとは家族に管理してもらうかクロークに預けてしまえば、身軽に動くことができますね。
まとめ
黒留袖を着る日のサブバッグについて、NGな例と選び方のポイントをお話ししてきました。マナーと聞くと難しく感じるかもしれませんが、基本は「相手への敬意」と「調和」です。
紙袋や派手なブランドロゴを避けるのは、お祝いの席の雰囲気を壊さないため。動物の革を避けるのは、縁起を担ぐためです。そう考えると、自然と選ぶべきバッグが見えてくるのではないでしょうか。
当日、バッグのことで不安にならず、心からの笑顔で新郎新婦をお祝いできるのが一番です。ぜひ、素敵なサブバッグを用意して、自信を持って黒留袖を着こなしてくださいね。きっと、着物姿がさらに美しく輝くはずです。
