「着物は敷居が高くて難しそう」と感じたことはありませんか?反物から選んで仕立ててもらうなんて、まだ早いかもしれないと躊躇してしまう気持ち、よく分かります。
でも実は、洋服と同じような感覚で選べる「プレタ着物」という選択肢があるんです。これなら、今日買って明日すぐに着て出かけることだって夢ではありません。
この記事では、手軽に始められる「プレタ着物」の魅力や、知っておくべきメリット・デメリットについてお話しします。一番の悩みどころである「サイズ選び」のコツも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
プレタ着物とは?
「プレタ着物」という言葉を初めて聞いた方もいるかもしれません。これは簡単に言うと、すでに着物の形に仕立て上がっている新品の着物のことです。
お店に行って、ハンガーにかかっている洋服を選んで試着室へ行く。あの感覚で着物を選べるのがプレタ着物の最大の特徴です。
呉服屋さんで反物を体に巻いてもらいながら想像力を働かせる必要はありません。目の前にあるその形そのままで、自分の手元に届くのです。
1. プレタポルテ(既製服)の意味
「プレタ」とは、フランス語の「プレタポルテ(Prêt-à-porter)」を略した言葉です。意味は「既製服」、つまりそのまま着られる状態で売られている服を指します。
高級なオートクチュール(注文服)に対する言葉として使われてきました。着物の世界でも同じで、自分サイズに仕立てる「お誂え」に対して、既製品のことをこう呼びます。
洋服では当たり前のことですが、着物の世界ではこの「出来上がっていること」が、実はとても画期的な選択肢なんです。
2. 仕立て上がり着物との関係
お店やネットショップによっては「仕立て上がり着物」と表記されていることもあります。呼び方は違いますが、基本的にプレタ着物と同じものを指していると考えて大丈夫です。
「お仕立て上がり」と書いてあると、なんとなく誰かが着たもののような気がするかもしれません。ですが、基本的には「新品の既製品」を指す言葉として使われています。
袋から出せばすぐに袖を通せる状態ですので、急なお出かけの予定が入ったときなどにも重宝します。
3. リサイクル着物との違い
よく混同されがちなのが、古着屋さんなどで売られている「リサイクル着物」です。こちらも形にはなっていますが、誰かが一度袖を通した中古品である点がプレタ着物とは異なります。
リサイクル着物は、前の持ち主の体型に合わせて作られているため、サイズがバラバラです。一方、プレタ着物は規格サイズで作られているため、サイズの検討がつけやすいという違いがあります。
新品のパリッとした気持ちよさを味わいたいなら、やはりプレタ着物から入るのが安心かもしれません。
プレタ着物とお誂えの違い
着物を始めるなら、やはり「お誂え(オーダーメイド)」と何が違うのか気になりますよね。一番大きな違いは、自分の手元に届くまでのプロセスと時間にあります。
お誂えは自分だけの特別な一着を作る楽しみがありますが、プレタ着物には「今すぐ」というスピード感があります。それぞれの特徴を整理してみましょう。
| 項目 | プレタ着物(既製品) | お誂え(オーダーメイド) |
|---|---|---|
| 納期 | 即日〜数日 | 1ヶ月〜2ヶ月 |
| サイズ | 規定サイズ(S・M・Lなど) | 自分サイズにミリ単位で調整 |
| 試着 | そのまま羽織れる | 反物を巻いてイメージする |
| 価格 | 比較的リーズナブル | 生地代+仕立て代がかかる |
| 縫製 | ミシン縫製が主流 | 手縫いが主流 |
1. 注文から手元に届くまでの期間
お誂えの場合、反物を選んでから仕立てに出すため、完成までに1〜2ヶ月ほどかかります。季節を先取りして準備する必要があり、着たい日が決まっている場合は早めの行動が欠かせません。
一方、プレタ着物は在庫があればすぐに持ち帰ったり、数日で配送されたりします。「来週の観劇に着ていきたい!」といった急な思いつきにも応えてくれるのが嬉しいポイントです。
2. 一般的な価格帯の傾向
お誂えは、反物代に加えて「お仕立て代」や「裏地代」が別途かかるのが一般的です。そのため、トータルすると数万円から数十万円という価格になることも珍しくありません。
プレタ着物は、工場でまとめて縫製されることが多いため、仕立て代が価格に含まれていてもリーズナブルです。数千円から1万円台で手に入るものも多く、洋服を買う感覚でお財布を出せます。
3. 選べる素材や柄のバリエーション
お誂えなら、世の中にある膨大な反物の中から好きなものを選べます。裏地の色までこだわることができるので、まさに自分だけのこだわりを詰め込めます。
プレタ着物は、メーカーが「売れ筋」として企画したデザインが中心です。そのため、トレンドを取り入れたモダンな柄や、万人受けする可愛らしいデザインが多い傾向にあります。
プレタ着物を選ぶメリット
「サイズが合わないんじゃないか」という不安はあるものの、それを補って余りあるメリットがプレタ着物にはあります。特に着物をこれから始めたい方にとっては、最強の味方になってくれるはずです。
私が実際にプレタ着物を着ていて感じる「良さ」を、いくつか挙げてみます。
1. 購入してすぐに着られる手軽さ
買ったその日に着られるというのは、モチベーションを維持する上でとても大切です。「着たい!」という気持ちが熱いうちに袖を通せるので、着物へのハードルがぐっと下がります。
仕立て上がりを待っている間に季節が変わってしまった、なんていう失敗もありません。思い立ったら吉日、そのスピード感が現代のライフスタイルに合っている気がします。
2. 初心者でも手が届きやすい価格
着付けの練習をしたい時期は、高価な着物だと汚すのが怖くて手が震えてしまうものです。プレタ着物なら手頃な価格のものが多いので、気負わずに何度も練習できます。
万が一、着付けでシワになってしまったり、紐をきつく締めすぎたりしても、「まあ、いいか」と笑って済ませられます。この心の余裕こそが、着物上達への近道だったりするのです。
3. 自宅で洗える素材の多さ
プレタ着物の多くは、ポリエステルや木綿などの「洗える素材」で作られています。正絹(シルク)のように、着るたびにクリーニング代を気にする必要がありません。
焼肉の匂いがついても、雨で泥はねしても、家に帰って洗濯機に入れれば元通りです。清潔感を保ちやすいので、普段着として着物を楽しみたい方にぴったりです。
4. 洋服と同じ感覚で試着ができる安心感
反物の状態から仕立て上がりを想像するのは、実はベテランでも難しいことです。「素敵な柄だと思ったけど、着てみたら派手すぎた」という失敗はお誂えにつきものです。
その点、プレタ着物は完成形を体に当てて確認できます。顔映りや全体のバランスを鏡で見ながら選べるので、「思っていたのと違う」という悲劇を未然に防げます。
知っておきたいデメリット
良いことづくめに見えるプレタ着物ですが、もちろんデメリットもあります。ここを理解して購入しないと、「やっぱり着にくい」とタンスの肥やしになってしまうかもしれません。
安さや手軽さの裏側にある注意点も、しっかり確認しておきましょう。
1. 体型にぴったり合わせにくいサイズ感
既製品である以上、どうしても「帯に短し襷に長し」ということが起こります。特に背が高い方やふくよかな方、逆に小柄で華奢な方は、どこかで妥協する必要が出てきます。
着物は着付けで多少の調整はできますが、極端にサイズが合わないと着付けの難易度が上がります。自分の体型に近いサイズを探す手間はどうしても発生してしまいます。
2. 人気のデザインは人と被る可能性
大量生産されているプレタ着物は、人気ブランドの新作などであれば、お出かけ先で同じ着物を着ている人と鉢合わせる可能性があります。
「あ、あの人もネットで見たあの着物だ」と気づいてしまう気まずさは、洋服と同じです。個性を出し切りたい場合は、帯や小物でアレンジする工夫が必要になります。
3. ミシン縫製特有の縫い目や質感
コストを抑えるために、プレタ着物の多くはミシンで縫製されています。手縫いに比べると縫い目が硬く、着たときに生地が体に沿いにくいと感じることがあるかもしれません。
また、縫い目が表にポツポツと見えてしまう場合もあります。遠目には分かりませんが、手縫いのふんわりとした着心地を知っている方には、少し物足りなく感じるでしょう。
失敗しないサイズ選びのコツ
プレタ着物を選ぶ際、もっとも悩ましいのがサイズ選びです。「S・M・L」と書いてあっても、洋服のサイズ感とは少し違うので注意が必要です。
試着できないネット通販などで購入する場合は、特に数字の確認が重要になります。
1. 自分の身長とヒップサイズの計測
まずは自分の体を測ることから始めましょう。洋服のサイズがMだからといって、着物もMで大丈夫とは限りません。
以下の2箇所だけは、メジャーを使って正確に測っておくことをおすすめします。
- 身長
- ヒップサイズ(一番太い部分)
この2つの数字が分かれば、とりあえず大きな失敗は防げます。
2. 最も重要な「身丈」と「裄」の確認
着物のサイズ表を見ると色々な数字が並んでいますが、必ずチェックすべきなのは「身丈(みたけ)」と「裄(ゆき)」の2つです。
- 身丈(背中の中心から裾までの長さ)
- 裄(背中の中心から手首の骨までの長さ)
身丈は「自分の身長 ±5cm」以内であれば、おはしょり(腰の折り返し)で調整して着られます。裄は、腕を斜め45度に下ろして測りますが、短すぎるとつんつるてんで子供っぽく見えてしまうので注意が必要です。
3. サイズが合わない時の許容範囲の目安
ピッタリのサイズがない場合、どのくらいの誤差なら許されるのでしょうか。一般的に、身幅(横幅)は少し大きくても着付けで巻き込んでしまえばなんとかなります。
逆に、身丈が短すぎる(身長マイナス10cm以上)と、おはしょりが作れず、対丈(ついたけ)で着るなどの工夫が必要になります。初心者のうちは、「大は小を兼ねる」の精神で、少し大きめを選ぶ方が着付けは楽です。
4. S・M・L・TLなどのサイズ表記の基準
メーカーによって基準は異なりますが、一般的なプレタ着物のサイズ展開には傾向があります。特に最近増えている「TLサイズ」や「BLサイズ」は要チェックです。
- Sサイズ
- Mサイズ(フリーサイズ)
- Lサイズ
- TLサイズ
- BLサイズ(ワイドサイズ)
身長150cm前半ならS、160cm前後ならMやフリー、165cm以上ならLやTL(トールサイズ)が目安です。ヒップが95cm以上ある場合は、BL(身幅広め)などを選ぶと前がはだけにくくなります。
主な素材と特徴
プレタ着物は、使われている素材によって着心地や手入れの方法がまったく違います。季節や目的に合わせて素材を選ぶのも、着物の楽しみ方の一つです。
代表的な3つの素材について、それぞれの特徴を見ていきましょう。
1. 手入れが楽なポリエステルの特徴
プレタ着物の中で圧倒的に多いのがポリエステル素材です。発色が良く、水や汚れに強いので、雨の日でも気兼ねなく着られます。
ただ、化学繊維なので静電気が起きやすく、熱がこもりやすいという弱点もあります。冬は暖かくて良いのですが、真夏は少し蒸れるかもしれません。
2. 肌触りが優しい木綿やウールの魅力
普段着として昔から愛されているのが、木綿やウールの着物です。これらもプレタとして多く販売されており、洋服に近い感覚で着こなせます。
木綿は吸水性が良く、着れば着るほど体に馴染んで柔らかくなります。ウールは単衣(裏地なし)でも暖かく、秋冬の普段着として優秀です。どちらも静電気が起きにくいのが嬉しいですね。
3. 絹(正絹)のプレタ着物の存在
数は少ないですが、正絹(シルク)のプレタ着物も存在します。リサイクルではなく新品の正絹プレタは、お誂えに近い高級感があります。
価格は高くなりますが、「仕立てを待たずに良い着物を着たい」という方には選択肢の一つになります。ただし、自宅では洗えないので、メンテナンスには注意が必要です。
おすすめの着用シーン
「プレタ着物は安っぽいから、着ていく場所に困るのでは?」と心配される方もいるかもしれません。確かにフォーマルな式典には向きませんが、活躍する場面は意外と多いのです。
ルールにとらわれすぎず、まずは自分が楽しむために着てみてください。
1. 普段のお出かけや着付けのお稽古
カフェで友人とランチをしたり、近くの美術館へ行ったり。そんな「ちょっとしたお出かけ」こそ、プレタ着物の出番です。
また、着付け教室に通う際の練習着としても最適です。汗をかいても洗えるので、何度も着て、畳んで、着付けの技術を体に覚え込ませるのに最高のパートナーになります。
2. 雨の日や汗をかきやすい季節
高級な正絹の着物を持っている人でも、雨の日や梅雨の時期はポリエステルのプレタ着物を選びます。水濡れによる縮みやシミを気にしなくて済むからです。
夏場のお祭りや花火大会に着ていく浴衣も、実はプレタ着物の一種と言えます。汗をダラダラかいても、帰ってから洗濯機へ放り込める気楽さは何にも代えがたいものです。
3. 気軽なランチや観劇などのカジュアルな場
歌舞伎や演劇の観劇など、少しおしゃれをして出かけたい場所にも馴染みます。最近のプレタ着物はデザイン性が高く、一見しただけではポリエステルと分からないものも増えています。
ただし、結婚式の披露宴や格式高いお茶会など、「格」が求められる場には不向きなことが多いです。あくまで「おしゃれ着」「街着」として楽しむのが正解です。
どこで購入できる?
プレタ着物を手に入れる場所は、以前に比べて格段に増えました。自分のライフスタイルに合わせて、買いやすい場所を探してみてください。
それぞれの購入場所には特徴があるので、使い分けるとより便利です。
1. 種類が豊富なネット通販の活用
最も手軽で種類豊富なのが、楽天市場やAmazon、着物専門のネットショップです。サイズ表記も細かく載っており、レビューを参考にしながら選べます。
24時間いつでも探せる上に、実店舗よりも価格が安いことが多いです。ただ、質感や微妙な色合いが画面越しでは分かりにくいのが難点です。
2. 実際に羽織れる実店舗や百貨店
ショッピングモールに入っている着物チェーン店や、百貨店の呉服売り場でもプレタ着物を扱っています。実物を見て、触って、試着できるのが最大のメリットです。
店員さんに相談しながら選べるので、サイズに不安がある初心者の方には特におすすめです。顔映りを確認できるので、似合わない色を買ってしまう失敗がありません。
3. リサイクルショップでの取り扱い
リサイクル着物店の中には、タグ付きの「新古品(しんこひん)」としてプレタ着物が並んでいることがあります。
一度人の手に渡ったものですが、未着用であれば状態は新品同様です。定価よりもかなり安く手に入る掘り出し物に出会えるかもしれません。
購入後のお手入れ
お気に入りのプレタ着物を長く楽しむためには、正しいお手入れが欠かせません。「洗える」と言っても、適当に洗うと型崩れの原因になります。
洋服とは少し違う、着物ならではの洗濯ポイントを押さえておきましょう。
1. 洗濯表示タグの確認方法
まずは着物の内側や衿先についているタグを確認してください。「洗濯機マーク」や「手洗いマーク」がついていれば、自宅で洗えます。
もし「水洗い不可」や「ドライ」のマークがついていたら、無理せずクリーニング店にお願いしましょう。特に裏地がついている「袷(あわせ)」の着物は、表地と裏地の縮率が違うと袋状にたるんでしまうので注意が必要です。
2. 自宅で洗う際の手順とネットの使用
洗濯機で洗う場合は、必ず「着物用洗濯ネット」または大きめのネットに入れてください。着物を「袖だたみ」にして、ネットの中で動かないようにピッタリのサイズに入れるのがコツです。
- 綺麗にたたむ
- ネットに入れる
- おしゃれ着コース(ドライコース)を選ぶ
- 脱水は1分以内(ごく短く)
この手順を守るだけで、シワや型崩れを最小限に抑えられます。
3. シワを防ぐ干し方とアイロン掛け
脱水が終わったらすぐに取り出し、着物ハンガーにかけて干します。この時、手でパンパンと挟むように叩いてシワを伸ばしておくと、アイロンの手間が省けます。
ポリエステルなら乾きが早く、ほとんどアイロン入らずで着られます。もしシワが気になる場合は、あて布をして低温〜中温でサッとかけるだけで十分綺麗になります。
まとめ
プレタ着物は、「着物は難しい」という思い込みを軽やかに裏切ってくれる素敵なアイテムです。サイズ選びさえ間違えなければ、洋服感覚で気軽に着物ライフをスタートできます。
少し身幅が余ったり、丈が長かったりしても、そこは「着付けの工夫」でカバーできるのが着物の懐の深いところです。完璧を目指す必要はありません。
まずは気に入った柄の一枚を手に入れて、袖を通してみてください。その一歩が、新しい自分との出会いになるはずです。
