夏祭りや花火大会の季節が近づくと、新しい浴衣が欲しくなりますね。でも、ネット通販やお店で浴衣を選ぶとき、「自分のサイズがわからない」と悩んだことはありませんか?
洋服ならSやMでなんとなく選べますが、浴衣には「身丈(みたけ)」や「裄(ゆき)」といった聞きなれない言葉が並んでいます。これを無視して選んでしまうと、裾が短すぎたり、逆に引きずってしまったりと着付けで苦労することになりかねません。
実は、浴衣のサイズ選びは洋服よりもずっとシンプルで、自分の身長さえわかれば失敗を防ぐことができます。
今回は、初心者の方でも迷わずに選べる「浴衣のサイズの測り方」と、身長から割り出すベストな寸法の目安についてお話しします。自分にぴったりの一枚を見つけて、今年の夏を涼やかに楽しみましょう。
洋服とは少し違う浴衣のサイズ表記
普段私たちが着ている洋服と、浴衣などの和服では、サイズに対する考え方が根本的に違います。洋服は体のラインに合わせて立体的に作られていますが、浴衣は直線の布を縫い合わせた平らなものです。
そのため、体にフィットさせるかどうかではなく、「布を体に巻き付けたときにどう見えるか」が基準になります。まずは、この違いを少しだけ頭に入れておくと選びやすくなります。
1. S・M・Lだけではない寸法の決まり方
最近の浴衣にはS・M・Lといったサイズ表記も増えてきましたが、これだけを頼りにするのは少し危険かもしれません。メーカーによって基準がバラバラだからです。
洋服ならウエストやバストのサイズが重要ですが、浴衣で一番に見るべきなのは「長さ」です。
横幅は着付けでかなり融通が利きますが、縦の長さが足りないとどうにもなりません。だからこそ、タグに書かれている「寸法」の数字をチェックすることが大切なのです。
2. おはしょりで調節できる長さの仕組み
女性の浴衣には、着るときに腰のあたりで布を折り上げる「おはしょり」という部分があります。これがあるおかげで、多少サイズが大きくても自分の身長に合わせて丈を調節できます。
洋服は丈が長いと切るしかありませんが、浴衣は「長い分にはどうにでもなる」というのが大きな特徴です。
逆に言うと、短すぎておはしょりが作れない場合は、着付けの難易度がぐっと上がってしまいます。この「調節機能」を前提に作られていることを覚えておいてください。
自分に合うサイズを知るための用語「身丈」とは?
浴衣選びで最も重要なキーワードが「身丈(みたけ)」です。ネットショップの商品ページでも必ず記載されていますが、これがどこの長さを指しているのかを正しく理解しましょう。
身長と同じ言葉のように聞こえますが、意味合いは少し異なります。ここを間違えると、「思ったより短かった」という失敗につながります。
1. 背中の縫い目で測る長さの意味
身丈とは、浴衣の肩山(肩の一番高いところ)から裾までの全体の長さを指します。
一般的には、背中の中心にある縫い目に沿って測った長さのことです。ハンガーにかけた状態で、上から下まで一直線に測った長さだと思ってください。
この数字の中に、着た時に腰で折り返す「おはしょり」の分も含まれています。つまり、自分の体よりも長い布を身にまとうことになるのです。
2. 身丈と着丈の言葉の違い
よく似た言葉に「着丈(きたけ)」がありますが、これはまったく別の意味になります。着丈は、おはしょりを作って着付けた後の、首の付け根から足首までの長さです。
ワンピースの丈などはこの「着丈」に近いイメージですね。
通販サイトなどで「身丈」と書かれているのに「着丈」のつもりで選んでしまうと、おはしょりの分が足りず、つんつるてんの状態になってしまいます。必ず「身丈」を確認するようにしましょう。
身長から割り出す「身丈」の目安と計算方法
では、具体的にどのくらいの身丈を選べばよいのでしょうか。実は、とても簡単な計算式があります。
難しい計算は必要ありません。自分の身長さえ知っていれば、すぐに適正サイズがわかります。
1. 身長と同じ長さが基本の基準
一番わかりやすい目安は、「身長 = 身丈」です。
例えば、あなたの身長が160cmなら、身丈が160cmの浴衣を選ぶのが基本です。これなら、腰ひもでおはしょりを作ったときに、ちょうど良い着丈になります。
昔からの知恵として、着物の寸法は身長と同じくらいが良いとされてきました。まずはこの数字を基準にして探してみましょう。
2. プラスマイナス5cm〜10cmの許容範囲
もちろん、身長とぴったり同じ数字の浴衣が見つかるとは限りません。そんなときは、前後5cmの範囲内であれば問題なく着ることができます。
身長160cmの人なら、身丈155cm〜165cmの範囲です。
もし着付けに慣れているなら、プラスマイナス10cmまではカバーできると言われています。目安を以下の表にまとめました。
| あなたの身長 | おすすめの身丈(ベスト) | 着付け可能な範囲(許容) |
|---|---|---|
| 150cm | 150cm | 145cm 〜 155cm |
| 155cm | 155cm | 150cm 〜 160cm |
| 160cm | 160cm | 155cm 〜 165cm |
| 165cm | 165cm | 160cm 〜 170cm |
短いほうにズレるとおはしょりが少なくなってお腹が見えそうになり、長いほうにズレるとおはしょりが長すぎてモタつきます。初心者のうちは、できるだけ「身長のプラスマイナス5cm」に収めるのが安心です。
3. 理想的な着姿になる長さのバランス
サイズが合っていると、着付けたときのバランスがとても美しく見えます。
理想的なのは、くるぶしが隠れるくらいの丈になり、おはしょりが人差し指一本分(約5〜7cm)きれいに見える状態です。
長すぎる浴衣を買ってしまった場合は、腰ひもの位置を高くしたり、胸の下でもう一本紐を使って余分な布を上げたりする工夫が必要です。逆に短い場合は、腰ひもを低く結ぶことで多少カバーできます。
手の長さに関わる「裄(ゆき)」の重要性
身丈の次にチェックしたいのが「裄(ゆき)」です。これは手の長さに関わる寸法で、見た目の上品さを左右する大切なポイントです。
身丈が合っていても、ここが極端に合っていないと、なんだか借り物を着ているような印象になってしまいます。
1. 背中の中心から手首までの長さ
裄とは、背中の中心(首の付け根の骨)から肩を通って、手首のくるぶしまでの長さを指します。
洋服の「袖丈」とは測り方が違うので注意が必要です。洋服は肩の先から測りますが、浴衣や着物は背中の真ん中から測ります。
袖の長さだけでなく、肩幅も含めた全体の横の長さだと考えるとイメージしやすいかもしれません。
2. 手首のくるぶしが見える程度の目安
浴衣の場合、手首のぐりぐり(くるぶし)が少し隠れるか、ギリギリ見えるくらいの長さがベストです。
きっちりした着物なら手首が隠れる長さが良いとされますが、浴衣はカジュアルな遊び着です。涼しげに見せるために、あえて少し短めを選ぶのも粋だとされています。
腕を下ろしたときに、手首の骨全体が見えるくらいでも、夏らしくて素敵です。
3. 短すぎたり長すぎたりする場合の印象
もし裄が短すぎると、腕がニョキっと出ているように見えて、少し子供っぽい印象や田舎っぽい雰囲気になってしまうことがあります。
逆に長すぎて手の甲まで隠れてしまうと、だらしなく見えたり、着られている感が出てしまったりします。
洋服感覚で「萌え袖」のようにするのは、和装ではあまり美しくありません。手首がすっきり見える長さを意識して選んでみてください。
よく見かける「フリーサイズ」は誰にでも合うのか?
ショッピングモールや通販サイトで売られている浴衣の多くは「フリーサイズ(F)」と書かれています。
「フリーというくらいだから誰でも着られるはず」と思いがちですが、実際はどうなのでしょうか。実は、ここにもちょっとした落とし穴があります。
1. 一般的なフリーサイズの適応身長
市販されているフリーサイズの浴衣は、だいたい身長155cm〜165cmくらいの人を想定して作られています。身丈でいうと163cm前後のものが一般的です。
これは日本人の平均的な身長に合わせているためです。この範囲内の身長の方であれば、フリーサイズを選んでおけば大きく失敗することはありません。
ただ、最近は平均身長も変わってきているので、メーカーによって設定が微妙に違うこともあります。必ず数字を確認しましょう。
2. 150cm台や170cm台の人が着る場合
身長150cm前半の小柄な方がフリーサイズを着ると、かなり布が余ります。おはしょりが長くなりすぎるため、腰ひもの位置を工夫して余分な布を隠す「二度上げ」などのテクニックが必要になるかもしれません。
逆に170cm近い長身の方が着ると、おはしょりがほとんど出ないか、裾が短くなってしまいます。
「なんとか着られる」のと「きれいに着られる」のは違います。無理にフリーサイズを選ばず、サイズ展開のあるお店を探すのも一つの手です。
3. 幅広い体型に対応できる理由
身長に関しては制限がありますが、横幅(体型)に関しては、フリーサイズでもかなり幅広く対応できます。
浴衣は前を合わせて紐で結ぶだけの構造なので、痩せている人でもふっくらした人でも、巻き加減で調整できるからです。
ヒップが100cmくらいまでなら、一般的なフリーサイズでも問題なく着られます。もしそれ以上の場合は、「ワイドサイズ」や「ヒップ○○cm対応」と書かれたものを選ぶと、はだける心配がなく安心して歩けます。
失敗しないための自分の体の測り方
サイズ選びで失敗しないためには、やはり自分の寸法を正しく知っておくことが一番の近道です。
メジャーさえあれば自宅で簡単に測れます。誰かに手伝ってもらうのが一番正確ですが、一人でも工夫すれば測ることができますよ。
1. メジャーを使った正しい身長の測り方
まずは基本の身長です。健康診断の数字を覚えている方も多いと思いますが、改めて測ってみましょう。
- 壁に背中をつけて立つ
- 本などを頭に乗せて壁と直角にする
- その位置に印をつけて床からの長さを測る
このとき、足は素足で測るのがポイントです。靴を履いているときの身長とは数センチ変わってくることがあります。
2. 首の後ろから手首までの測り方
次に、裄(ゆき)を知るための腕の長さです。これは一人で測るのが少し難しいので、誰かに手伝ってもらうのがおすすめです。
- 腕を斜め下45度くらいに下ろす
- 首の後ろのぐりぐり(骨)にメジャーを当てる
- 肩の山を通って、手首のぐりぐり(骨)まで測る
腕を真横に伸ばすのではなく、自然に下ろした状態で測るのがコツです。この長さが、あなたに合う「裄丈」になります。
3. ヒップサイズを測っておくメリット
最後に、お尻周りの一番太い部分を測っておきましょう。
- お尻のトップ(一番高いところ)を一周測る
- メジャーが水平になっているか確認する
この数字は、浴衣の「身幅(みはば)」に関係します。
自分のヒップサイズより、浴衣の前幅+後幅×2の合計が少なすぎると、歩いているうちに前がはだけて足が見えてしまいます。特にふっくら体系の方は、ここを知っておくと安心して選べます。
身長が高い人・小柄な人のサイズの選び方
標準的な体型から少し外れると、とたんに浴衣選びが難しく感じるかもしれません。「既製品では合わないかも」と諦めないでください。
最近では、多様なサイズ展開をしているブランドも増えています。自分の体型に合ったサイズ表記を知っておけば、検索がスムーズになります。
1. 小さいサイズ(Sサイズ)を探す時のポイント
身長150cm以下の方や、とても華奢な方は「Sサイズ」や「プチサイズ」と表記されているものを探しましょう。
身丈が155cm前後のものが目安です。子供用の150cmサイズ(ジュニアサイズ)も意外と狙い目で、大人っぽい柄を選べば違和感なく着られます。
大人用のSサイズは、身丈だけでなく裄も短めに作られているので、着られた感じにならずスッキリと着こなせます。
2. トールサイズ(L・TL)が必要なケース
身長が168cm以上ある方は、フリーサイズだとおはしょりが出ない可能性が高いです。「TLサイズ(トールサイズ)」や「Lサイズ」を選びましょう。
身丈が167cm〜170cmくらいあるものが安心です。
店舗では扱いが少ないこともありますが、ネットショップの浴衣専門店なら豊富な柄から選べます。おはしょりがしっかりあるだけで、着姿の美しさが格段に上がります。
3. 既製品が合わない場合の選択肢
どうしても既製品が合わない、あるいはこだわりたいという場合は、反物(たんもの)から仕立てるという方法もあります。
「高そう」というイメージがあるかもしれませんが、リサイクル着物店や古着屋さんなら、仕立て上がりの上質な浴衣が手頃な価格で見つかることもあります。
昔の浴衣は小さめのものが多いので、小柄な方はリサイクルショップでお気に入りの一枚に出会えるかもしれません。
男性の浴衣サイズを選ぶ時の違い
ここまでは主に女性の浴衣についてお話ししましたが、男性の選び方はまったく違います。
パートナーや家族の浴衣を選ぶときに役立つので、違いをざっくりと押さえておきましょう。男性の場合は「調整がきかない」というのが最大の特徴です。
1. おはしょりを作らない対丈(ついたけ)という着方
男性の浴衣は、女性のように腰で折り返す「おはしょり」を作りません。着たらそのままの長さになる「対丈(ついたけ)」という着方をします。
つまり、ごまかしが効かないのです。
長すぎれば裾を引きずりますし、短すぎれば足首が丸見えになります。女性以上にサイズ選びがシビアだと言えるでしょう。
2. 男性の場合は身長から引く数字が変わる
男性の適正な身丈は、身長から約25cm〜30cmを引いた長さと言われています。
頭の長さや首の長さを引いた分が、そのまま肩から足首までの長さになるからです。計算が面倒な場合は、タグに書かれている「適応身長」をそのまま信じて選ぶのが一番確実です。
女性のように「長いものを買って調整する」ことはできないので、サイズ表の適応身長から外れないように選びましょう。
3. お腹周りで決まる帯の位置と丈の関係
男性の場合、帯を締める位置が女性よりも下(腰骨のあたり)になります。
もしお腹が出ている方の場合、帯でお腹を持ち上げる形になるため、生地が上に取られて裾が上がりやすくなります。
お腹周りが立派な方は、身長だけで選ぶと前裾が短くなってしまうことがあるので、少し長めのサイズや、幅広のサイズを選ぶのがコツです。
試着ができないネット購入時のチェックポイント
お店で羽織ってみるのが一番ですが、色柄の豊富さや価格の安さから、ネットで購入する方も多いですよね。
画面越しでは生地の質感やサイズ感がつかみにくいものです。届いてから「失敗した!」とならないために、購入ボタンを押す前に確認すべき点があります。
1. サイズ表の数字と自分の寸法の照らし合わせ方
まずは、商品ページにある詳細なサイズ表を必ず見ましょう。特にチェックするのは以下の3点です。
- 身丈(自分の身長±5cm以内か)
- 裄丈(首から手首までの長さが合っているか)
- ヒップサイズ(適応範囲に入っているか)
「Mサイズだから大丈夫だろう」という思い込みは捨てて、メジャーで測った自分の数字と照らし合わせる作業を必ず行ってください。
2. 袖の形や長さによる印象の違い
写真のモデルさんが着ている袖の長さ(袖丈)も見ておきましょう。
一般的な袖丈は49cm前後ですが、アンティーク風のものなどは長めに作られていることがあります。袖が長いと優雅でエレガントに見えますが、動きにくさを感じることもあります。
逆に活動的に動きたい場合は、袖が標準的な長さのものを選ぶと安心です。
3. 素材による縮みの可能性について
浴衣の素材によって、洗濯後にサイズが変わる可能性があります。
綿100%の浴衣は、吸湿性が良くて涼しいのが魅力ですが、洗うと少し縮む性質があります。特に丈がギリギリの場合は、洗濯後に短くなってしまうかもしれません。
ポリエステル混紡や「防縮加工」がされているものなら縮みは少ないです。綿素材を選ぶ場合は、気持ち長めを選んでおくと安心かもしれません。
まとめ:自分の寸法を知れば浴衣選びはもっと楽しくなる
浴衣のサイズ選びで最も大切なのは、「身丈」が自分の身長に合っているかどうかです。
ここさえ押さえておけば、あとは着付けの工夫でなんとかなります。「身長プラスマイナス5cm」という魔法の数字を覚えておくだけで、膨大な数の浴衣の中から自分に合うものを自信を持って選べるようになります。
サイズへの不安がなくなれば、あとは好きな色や柄を純粋に楽しむだけです。
自分にぴったりのサイズを知ることは、着心地の良さに直結します。今年の夏は、体に馴染む素敵な浴衣を見つけて、お祭りや散策に出かけてみてはいかがでしょうか。着崩れの心配も減って、きっと今まで以上に夏を楽しめるはずです。
