馬乗り袴のトイレのやり方は?裾を汚さず着崩れを防止する手順を解説

袴姿で一番の不安要素、それがトイレですよね。「もし裾を汚してしまったらどうしよう」と考えると、せっかくのハレの日なのに水分補給すらためらってしまうかもしれません。特に馬乗り袴はズボンのように股が分かれているため、スカート状の行灯袴とは違ったコツが必要です。

でも安心してください。慣れてしまえば、実は洋服の時と同じくらいスムーズに用を足せるようになりますよ。この記事では、着物初心者の方でも絶対に失敗しない「馬乗り袴のトイレのやり方」を徹底解説します。裾を汚さず、しかも着崩れまで防ぐ手順をしっかりマスターして、心置きなく袴スタイルを楽しんでくださいね。

目次

馬乗り袴でのトイレが難しい理由とは?

普段履いているズボンと同じ感覚でいると、痛い目を見るのが馬乗り袴です。構造上の特徴を理解しておかないと、個室に入ってからパニックになってしまうかもしれません。まずは敵を知ることから始めましょう。

1. ズボンのように股が分かれている構造

馬乗り袴は、一見スカートのように見えても中はズボンと同じように左右に分かれています。そのため、単に裾をまくり上げるだけでは不十分で、左右それぞれの足元をケアしなければなりません。

スカート状の行灯袴ならガバッとまとめて持ち上げれば済むのですが、馬乗り袴の場合は生地の量も多いため、処理にもたつきやすいのです。「あれ、こっちの布はどこのだっけ?」とならないよう、構造をイメージしておくことが大切ですよ。

2. 長い袖と広い裾が床につきやすい問題

袴の裾だけでなく、着物の長い袖(袂)も大きなリスク要因です。裾に気を取られている間に、だらりと下がった袖が便器や床に触れてしまう事故が後を絶ちません。

特に現代のトイレはスペースが限られていることも多く、体を動かした拍子に壁やドアに擦ってしまうこともあります。足元への注意と同じくらい、上半身の処理にも気を配る必要があるわけですね。

トイレの個室に入る前の事前準備とは?

トイレの個室に入ってから慌てて準備を始めると、焦りから失敗を招きがちです。実は、勝負は個室のドアを開ける前から始まっていると言っても過言ではありません。余裕を持って用を足すために、外でできる準備は済ませておきましょう。

1. 長い袖を帯や袴の脇に挟み込む手順

まずは邪魔になる長い袖をコンパクトに収納します。両方の袖端を持ち、体の前で交差させるようにしてから、袴の脇の隙間や帯に挟み込んでしまいましょう。これだけで両手が自由に使えるようになります。

袖の処理手順

  • 左右の袖端を持つ
  • 体の前で交差させる
  • 袴の脇か帯に挟む

この時、あまり強く引っ張りすぎると着崩れの原因になるので注意してくださいね。ふんわりと、でも落ちてこない程度に固定するのがポイントです。もし帯に挟むのが難しければ、袖同士を軽く結んでしまうのも一つの手ですよ。

2. 着物クリップや洗濯バサミを取り出すタイミング

裾を留めるためのクリップ類は、必ず個室に入る前に取り出しやすい場所に移しておいてください。バッグの奥底に入れたままだと、狭い個室の中でガサゴソと探す羽目になります。

理想は、帯の隙間や懐(ふところ)など、サッと取り出せる場所に一時的に忍ばせておくことです。これなら、いざという時に「ない!」と焦ることもありません。段取り八分と言いますが、トイレ対策もまさに準備が9割ですよ。

3. ハンカチを手が届く場所に移動させておく理由

トイレの後に手を洗うハンカチも、事前に取り出しやすい場所へ移動させておきましょう。袴の紐を締め直したり裾を整えたりした後、濡れた手で着物を触るのは避けたいですよね。

また、万が一裾を汚してしまった時の応急処置用としても、ハンカチは命綱になります。吸水性の良いタオルハンカチなどを、帯の間や袂の取り出しやすい位置にスタンバイさせておくと安心感が違いますよ。

裾を汚さないためのまくり方の手順は?

いよいよ本番、裾のまくり上げです。ここが一番の難所ですが、手順さえ守れば決して難しくありません。焦らず一つひとつの動作を確認しながら行えば、誰でもきれいに処理できますよ。

1. 袴の左右の裾をそれぞれ大きく持ち上げる

まずは馬乗り袴の左右の裾を、それぞれの手でしっかりと掴みます。そして、裏返しにするようなイメージで、思い切ってガバッと大きく持ち上げてください。

中途半端に持ち上げると、用を足している最中にパラパラと落ちてきてしまいます。「少し上げすぎかな?」と思うくらい、膝上あるいは太ももの付け根あたりまで一気に引き上げるのがコツですよ。

2. 袴の中に手を入れて着物と長襦袢をまとめるコツ

袴を持ち上げたら、次は中にある着物と長襦袢(ながじゅばん)の処理です。袴の中に手を入れて、着物と長襦袢の裾を一緒に掴み取ります。この時、左右別々にまとめるのがポイントです。

馬乗り袴は股が割れているので、左足側の着物類は左手で、右足側は右手でまとめるとスムーズです。イメージとしては、着物と長襦袢をズボンの裾のようにたくし上げる感覚に近いですね。

3. まとめた裾を帯の上側へしっかりと挟み込む

最後に、持ち上げた袴・着物・長襦袢をまとめて帯の上などに挟み込みます。あるいは、この状態で次のステップで紹介するクリップを使って固定します。

手を離しても裾が落ちてこない状態を作ることがゴールです。もし帯に挟むのが難しければ、自分の両脇で一時的に挟むという荒技もありますが、やはり道具を使うのが一番確実でおすすめですね。

クリップを使った裾の固定方法とは?

手で押さえているだけでは、どうしても不安定になりがちです。そこで活躍するのが「着物クリップ」や洗濯バサミなどの道具たち。これらを使うことで、両手が完全フリーになり、安心して用を足せるようになります。

1. 着物クリップで帯と裾を止めるベストな位置

まくり上げた裾を固定する際、クリップを止める位置は「帯の中央」か「左右の脇」がおすすめです。特に帯の中央で一箇所留めすると、全体の布がそこに集まるため落ちにくくなります。

あるいは、左右それぞれの裾を帯の端に留める「二点留め」も安定感抜群です。布の重みでクリップが弾け飛ばないよう、大きめのしっかりしたクリップを使うとより安心ですよ。

クリップを止める位置

  • 帯の前中央
  • 左右の脇(帯の上端)
  • 背中側の帯(届く場合)

2. クリップがない時に洗濯バサミで代用する方法

専用の着物クリップを持っていない場合は、家庭にある洗濯バサミでも十分代用可能です。ただし、挟む力が強すぎると着物の生地を傷めたり、跡がついたりする可能性があるので注意が必要です。

使う場合は、ハンカチやティッシュを生地と洗濯バサミの間に挟むと良いでしょう(これを「当て布」と言います)。ちょっとした一手間ですが、大切な着物を守るためには欠かせない配慮ですね。

3. 道具が何もない時に自分の顎を使う応急処置

もしクリップも洗濯バサミも忘れてしまったらどうすればいいでしょうか。そんな時は、まくり上げた着物の端を口でくわえるか、顎(あご)で挟んで固定するという最終手段があります。

見た目は少し恥ずかしいですが、背に腹は代えられません。ただし、口紅やファンデーションが着物につかないように気をつけてくださいね。本当に緊急時の裏技として覚えておくと、心の余裕につながりますよ。

用を足す時の姿勢と注意点とは?

裾の固定が完璧でも、座り方ひとつで失敗することもあります。洋服の時とは違い、着物は動きが制限される衣服です。いつも以上に慎重な動作を心がけましょう。

1. 便器に対して浅めに座るほうが良い理由

トイレに座る際は、便器の奥までどっかりと座るのではなく、少し浅めに座ることをおすすめします。深く座りすぎると、後ろ側の帯がタンクや蓋に当たって潰れてしまう恐れがあるからです。

また、浅めに座ることで、万が一裾が後ろから垂れてきても便器の中に落ちるリスクを減らせます。背筋を伸ばして、着物を汚さないような姿勢をキープすることを意識してみてください。

2. 袴の紐が緩まないように気をつける動作

用を足す際や立ち上がる際、無意識にお腹に力を入れたり体をひねったりすると、袴の紐が緩んでしまうことがあります。特に袴の紐は一度緩むと締め直すのが大変です。

なるべく静かに動作を行い、帯周りに余計な負荷をかけないようにしましょう。「そろりそろり」と動くイメージでちょうど良いくらいです。美しい所作は、着崩れ防止にもつながるんですよ。

3. 前側の紐(前紐)の位置を確認する

意外と見落としがちなのが、袴の前紐(まえひも)の位置です。裾をまくり上げた勢いで、紐の位置がずれたり結び目が解けそうになったりしていないか、座る前に一度チラッと確認してください。

もし紐が浮いているようなら、軽く押さえて元の位置に戻しておきましょう。トイレの中でのちょっとした確認作業が、トイレを出た後の美しい着姿を保つ秘訣になります。

トイレが終わった後の裾の下ろし方は?

用を足してホッと一息つきたいところですが、ここからがまた重要です。雑に裾を下ろすと、中で着物や長襦袢がぐちゃぐちゃになり、歩きにくくなってしまいます。元通りきれいに戻す手順を見ていきましょう。

1. 挟んでいた裾をゆっくりと引き抜く動作

まずは固定していたクリップを外し、挟んでいた裾をゆっくりと引き抜きます。一気にバサッと下ろすと、空気を孕んで膨らんでしまったり、裾同士が絡まったりする原因になります。

重力に任せてストンと落とすのではなく、手で支えながら静かに下ろしていくのがコツです。特に馬乗り袴は股の部分が引っかかりやすいので、丁寧に扱ってあげてくださいね。

2. 長襦袢・着物・袴の順番に整える流れ

裾を下ろす時は、内側から順番に整えていくのが鉄則です。まずは一番肌に近い長襦袢、次に着物、最後に袴という順序です。これを守らないと、中で布が団子状態になってしまいます。

特に長襦袢の裾がめくれ上がったままになっていると、歩くたびに不快感があります。一度しっかり足を振って、裾をさばいてから次の布を下ろすと良いでしょう。

裾を整える順序

  • 長襦袢のシワを伸ばす
  • 着物の裾を下ろして整える
  • 袴を下ろして形を整える

3. 最後に背中側のシワを撫でて取る

すべて下ろし終えたら、お尻や太ももの裏側にできたシワを手で撫でて伸ばします。座っていたことでどうしてもシワができやすくなっていますが、温かいうちに撫でればある程度は目立たなくなります。

鏡があれば、後ろ姿もチェックしてみてください。袴のひだが変に折れ曲がっていないか確認し、必要であれば手で整えておきましょう。後ろ姿まで気を使えるのが、真の着物美人・着物男子ですよ。

着崩れを防ぐための最終チェックポイントは?

個室を出て手を洗う前に、全身の最終チェックを行います。自分では気づかない部分が乱れていることもあるので、鏡を使って客観的に確認することが大切です。

1. 袴の横の空き部分(投げ)が乱れていないか見る

袴の脇の空いている部分(「投げ」や「笹ひだ」と呼ばれる部分)から、中の着物がだらしなく見えていないか確認しましょう。ここが大きく開いてしまっていると、だらしない印象を与えてしまいます。

もし着物がはみ出していたら、袴の中に丁寧に押し込んで整えます。ここがピシッとしているだけで、着付け全体が引き締まって見えますよ。

2. 帯の結び目が下がっていないか確認する

トイレでの動作によって、帯の結び目が下がったり緩んだりしていないかも要チェックです。特に袴下帯(はかましたおび)は、袴を支える土台なので重要です。

もし下がっているようなら、帯全体を少し持ち上げて元の位置に戻しましょう。帯の位置が決まれば、自然と袴の位置も安定します。

3. 袴のひだが綺麗に出ているかチェックする

最後に、袴の命とも言える「ひだ」が綺麗に出ているかを確認します。裾をまくり上げた影響で、ひだが消えていたり、変な癖がついていたりすることがあります。

手でひだをなぞるようにして整えてあげてください。このひと手間で、トイレに行った後だとは誰も気づかないくらい、美しい着姿が復活しますよ。

洋式トイレと和式トイレでの違いとは?

外出先によってトイレのタイプは異なります。洋式と和式、それぞれの特徴に合わせた対処法を知っておくと、どんな場所でも慌てずに済みますよ。

1. 洋式トイレで床に裾をつけないための工夫

洋式トイレは座って用を足せるので楽ですが、床に裾がつきやすいのが難点です。特に座る瞬間と立つ瞬間は、裾が広がりやすいので注意が必要です。

便座に座る前に、もう一度裾がしっかり持ち上がっているか確認し、足を開きすぎないようにすると良いでしょう。また、トイレの床が汚れている場合もあるので、なるべく足元をコンパクトにまとめるのが安全策です。

2. 和式トイレでしゃがむ時の裾の逃がし方

和式トイレは深くしゃがむ必要があるため、裾が地面につきやすく難易度が高めです。しゃがむ前に、裾をいつも以上に高く、しっかりとお尻側までまくり上げる必要があります。

しゃがんだ後は、前側の裾が膝について床に垂れないよう、手で押さえながら用を足すと安心です。和式の場合は足腰の筋肉も使うので、無理せず手すりなどがあれば活用してくださいね。

もし裾を汚してしまった時の対処法は?

どんなに気をつけていても、アクシデントは起こり得ます。「やってしまった!」と思っても、焦ってこすったりするのは逆効果。冷静な対処が被害を最小限に食い止めます。

1. 水で濡らしたハンカチで叩く汚れ落とし

もし尿ハネなどで汚してしまった場合は、絶対にこすってはいけません。汚れを繊維の奥に押し込んでしまうだけです。正解は、水で濡らして固く絞ったハンカチで「トントン」と優しく叩くこと。

汚れをハンカチに移すようなイメージですね。これで薄くなるようなら、それ以上の処置は帰宅後で大丈夫です。泥汚れなどの固形物がついた場合は、まずティッシュでつまみ取ってから叩きましょう。

2. 乾いた布で水分を吸い取る手順

濡れハンカチで叩いた後は、乾いたハンカチやティッシュで水分を吸い取ります。濡れたままにしておくと、そこだけ変色したり輪ジミになったりする原因になります。

この時も、ゴシゴシ拭くのは厳禁です。優しく押さえるようにして水分を取り除きましょう。着物はデリケートですが、初期対応さえ間違わなければ、後でプロに任せて綺麗になることがほとんどですよ。

トイレが楽になるおすすめの肌着とは?

最後に、次回の着用のために知っておきたい「便利な肌着」について紹介します。実は、トイレのしやすさは下着選びで劇的に変わるんです。

1. 股割れ式のステテコを活用するメリット

着物用の下着には「股割れ式」と呼ばれるステテコがあります。これは股の部分が開いているため、下着を下ろさなくても用を足せる優れものです。これさえあれば、裾をまくり上げる手間が大幅に減ります。

特に男性用のステテコや、女性用の和装スリップでも同様の機能がついたものが販売されています。頻繁に袴を着る予定があるなら、一枚持っておいて損はないアイテムですよ。

2. トイレの動作がスムーズになる下着の形状

股割れ式でなくても、裾が短めのスパッツや、ゴムが柔らかく下ろしやすい下着を選ぶだけでも随分違います。補正効果の強いガードルなどは、脱ぎ着が大変なのでトイレの時は苦労するかもしれません。

トイレでの動作を最優先するなら、締め付けが少なく、サッと下ろせる形状のものを選びましょう。「見えないところだから何でもいいや」ではなく、見えないところこそ快適さを追求するのが着物上級者への近道です。

おわりに

馬乗り袴でのトイレは、最初こそハードルが高く感じるかもしれません。しかし、「裾をしっかり持ち上げる」「クリップで固定する」「焦らず元に戻す」という基本の手順さえ守れば、恐れることは何もありません。

大切なのは、事前の準備と心構えです。クリップを忍ばせ、手順を頭の中でシミュレーションしておくだけで、当日の安心感は何倍にもなります。もし失敗しても、応急処置を知っていればパニックにならずに済みますよね。

着物は、着ている時間を楽しむためのものです。トイレの心配事で頭がいっぱいになってしまってはもったいない!この記事で紹介したテクニックを武器に、ぜひ晴れやかな気持ちで袴ライフを満喫してくださいね。あなたの着物姿が、最後まで美しく快適でありますように。

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