結婚式などの晴れ舞台で留袖を着る際、意外と困るのが「ハンカチをどこにしまうか」という問題ではないでしょうか。洋服のようにポケットがないため、いざという時に焦ってしまう方が実はとても多いのです。
留袖は格式高い礼装ですので、立ち居振る舞いも美しくありたいものですね。涙を拭う場面やお手洗いの際、スマートにハンカチを取り出せると、着物姿の品格がぐっと上がります。
この記事では、留袖を着る時のハンカチの正しい収納場所や、着崩れを防ぐスマートな出し入れのコツについて詳しく解説します。当日の不安を解消して、心置きなくお祝いの席を楽しんでくださいね。
留袖を着る時のハンカチの定位置とは?
着物にはポケットがないため、ハンカチをしまう場所は限られています。どこに入れても良いというわけではなく、出しやすさと見た目の美しさを両立させる必要があります。
基本的には、袖の「袂(たもと)」に入れるのが一般的です。しかし、状況によっては帯の間やバッグの中を活用することもあります。それぞれの場所の特徴を知っておくと安心ですよ。
基本となる袖の袂(たもと)
一番オーソドックスな収納場所は、袖の下に垂れ下がっている袋状の部分、つまり「袂(たもと)」です。ここは容量があり、ハンカチを忍ばせても外から目立ちにくいという利点があります。
ただし、袖口が開いているため、腕を上げた拍子に滑り落ちてしまうリスクもあります。そのため、入れ方には少しコツが必要になりますが、最も自然な所作で取り出せる場所と言えるでしょう。
取り出しやすい帯の間の活用
すぐに取り出したい場合は、帯の間に挟むという方法もあります。帯板と帯の間、もしくは帯と着物の間に少しだけ顔を覗かせるように入れます。
胸元に近いので、感動のシーンですぐに涙を拭きたい時には便利です。ただ、あまり分厚いハンカチを入れると胸元が膨らんでしまい、着姿が崩れる原因になるので注意が必要です。
サブとしてバッグに入れる場合
式典中は手元にバッグを持っていないことも多いですが、予備のハンカチはバッグに入れておくのが無難です。特に受付や移動中など、袂や帯から出すのが憚られる場面で役立ちます。
バッグの中には、使用後の濡れたハンカチをしまうためのビニール袋も一緒に用意しておくと完璧です。着物を湿気から守るための大切な準備ですね。
袖の袂に入れる時のスマートな手順
袂にハンカチを入れるといっても、ただ放り込めば良いわけではありません。適当に入れると、いざという時に見つからなかったり、不格好になったりします。
美しい所作に見える入れ方を知っておくと、当日の動きに余裕が生まれます。ここでは、初心者の方でも簡単にできるスマートな手順をご紹介します。
袖口から手を入れる正しい角度
ハンカチを入れる時は、反対の手で袖口を軽く押さえながら、スッと滑り込ませるように入れます。肘を張らず、脇を締めたまま行うと、とても上品に見えますよ。
袖口をガバッと開いて覗き込むのはマナーとして美しくありません。手探りで自然に入れられるよう、事前に鏡の前で練習しておくと安心ですね。
落とさないために奥へ入れるコツ
ハンカチを落とさないためには、袂の「底」ではなく、身体に近い「奥」の方に入れるのがポイントです。袖の丸みの部分(袖底)に入れてしまうと、腕を下げた時に重みで袖口の方へ滑ってきてしまいます。
以下の手順で入れると安定します:
- ハンカチを平らにたたむ
- 袖口から手を入れる
- 身体側の縫い目(袖付)に近い奥の方へ押し込む
左右どちらの袖に入れるべきか
基本的には、利き手と反対側の袖に入れるのがスムーズです。右利きの方なら、左の袖に入れておけば、右手でサッと取り出すことができます。
ただし、祝儀袋や末広(扇子)を持つ関係で、手が塞がっていることもあります。臨機応変に対応できるよう、左右どちらに入れても問題はありませんが、自分がどこに入れたかを忘れないようにしましょう。
留袖にふさわしいハンカチの選び方
フォーマルな場である結婚式では、ハンカチ選びにもマナーがあります。普段使いのタオルハンカチや、派手な柄物は避けた方が無難です。
留袖の格を損なわない、上品で機能的なハンカチを選ぶことが大切です。ここでは、色や素材、デザインの選び方について具体的に解説します。
フォーマルな場における色のルール
留袖に合わせるハンカチは、「白」が基本です。花嫁衣裳とかぶるのでは?と心配される方もいますが、小物は白で統一するのが礼装のルールですので安心してください。
真っ白でなくても、淡いピンクやブルーなどのパステルカラーなら許容範囲とされることが多いです。しかし、黒いハンカチはお葬式を連想させるため、慶事では絶対に避けてくださいね。
吸水性と品格を兼ね備えた素材
素材は、吸水性の高い「綿(コットン)」や「麻(リネン)」がおすすめです。見た目の高級感でシルクを選びたくなりますが、吸水性が低く滑りやすいため、実用面では少し扱いにくいかもしれません。
上質な綿のブロード生地や、薄手の麻素材なら、品格を保ちつつもしっかりと汗や涙を吸い取ってくれます。機能性と見た目のバランスが良いものを選びましょう。
刺繍やレースなどの許容範囲
無地である必要はありませんが、柄は控えめなものを選びましょう。同系色の糸で施された刺繍や、縁取りにレースがあしらわれたものは、上品で華やかさがあるのでおすすめです。
以下のデザインなら留袖に合わせても素敵です:
- イニシャルのワンポイント刺繍
- 控えめな花柄の透かし模様
- 縁がスカラップ状のレース仕上げ
なぜハンカチは2枚用意するのか?
着物慣れしている方の多くは、実はハンカチを「2枚」持っています。これは単なる予備ではなく、それぞれに明確な役割があるからです。
「2枚持ち」は、自分自身の快適さと、周囲への配慮を両立させるための知恵とも言えます。なぜ2枚必要なのか、その理由を知ると納得できるはずです。
1枚目はマナーとしての礼装用
1枚目は、先ほどご紹介したような「白の薄手ハンカチ」です。これは主に見せるためのもの、あるいは膝に置くためのもので、いわば正装の一部と考えましょう。
実際に顔を拭いたりして汚してしまうと、その後の写真撮影などで困ることがあります。このハンカチは、常にきれいな状態を保っておくのが理想的です。
2枚目は汗や水を拭く実用
2枚目は、実際に汗や涙を拭くための「実用的なハンカチ」です。ここでは、吸水性の高いタオルハンカチやガーゼハンカチが活躍します。
色は白やベージュなどの淡い色を選べば、もし見えてしまっても悪目立ちしません。しっかりと水分を吸収してくれる頼れる相棒として、袂の奥に忍ばせておきましょう。
相手に貸すための予備としての役割
結婚式では、感動して涙を流す親族や友人がいるかもしれません。そんな時、さっときれいなハンカチを差し出せると、とても素敵ですよね。
そのために、1枚目の礼装用ハンカチは常に清潔にしておくという意味もあります。「誰かのために持っておく」という心遣いが、着物姿をより美しく見せてくれます。
着姿を美しく保つたたみ方の工夫
ハンカチのたたみ方一つで、袂や帯周りのシルエットが変わってきます。適当にたたんで入れると、変な膨らみが出てしまい、せっかくの着付けが台無しになりかねません。
収納場所に合わせてたたみ方を変えるのが、着物美人の隠れたテクニックです。場所ごとの最適なたたみ方を覚えておきましょう。
袖の中でかさばらない四つ折り
袖の袂に入れる場合は、あまり小さくたたみすぎないのがコツです。小さく分厚くなると、袖の中でゴロゴロと動いて安定しません。
大判のハンカチなら四つ折り程度にして、平らな面積を広く保つようにします。こうすることで袖の生地に馴染み、外から見ても当たりが出にくくなります。
帯に挟む時の平らな形状
帯に挟む場合は、とにかく「薄さ」が命です。ハンカチを広げて縦長に折り、帯の幅に合わせてさらに折るなどして、できるだけ厚みが出ないように工夫します。
帯板の前に入れると目立ちにくいですが、きつい場合は無理をせず、帯揚げの下に少し忍ばせる程度にしておきましょう。胸元が浮かないように鏡でチェックしてくださいね。
取り出した時に美しい折り目
取り出した瞬間に、ハンカチがくしゃくしゃだと残念な印象を与えてしまいます。アイロンをしっかりかけておくことはもちろん、折り目がきれいに見えるようにたたんでおきましょう。
角と角をきっちり合わせるよりも、少しずらしてたたむと、指がかかりやすく開きやすくなります。優雅に取り出すための、ちょっとしたひと手間です。
結婚式本番でのハンカチを使う所作
いざ本番、ハンカチを使う場面が来ました。洋服の時と同じようにゴシゴシ拭いてしまうと、お化粧崩れの原因になりますし、何より優雅さに欠けてしまいます。
着物を着ている時は、動きを小さく丁寧にするのが基本です。ここでは、美しく見えるハンカチの使い方をご紹介します。
涙を拭く時の目元の押さえ方
涙を拭く時は、ハンカチの角や折り目を使って、目頭や目尻を「軽く押さえる」ようにします。決して横にこすってはいけません。
指先を揃えてハンカチを持ち、顔を少し伏せ気味にして押さえると、奥ゆかしく見えます。ファンデーションがハンカチについても、裏返して使えば周りには気づかれません。
膝の上に置く時のタイミング
食事中やスピーチを聞いている間、ハンカチを膝の上に置いておくと安心です。着席したら、さりげなく袂から取り出し、二つ折りくらいにして膝に載せます。
これは、食べこぼしで着物を汚さないためのガードの役割も果たします。ナプキンがある場合でも、自分のハンカチを重ねておくと、より丁寧な印象になりますよ。
使い終わった後のスムーズな戻し方
使い終わったハンカチを戻す時は、慌てずに元の場所へしまいます。濡れた面を内側に折り込み、反対の手で袖口を隠しながら、スッと袂に入れます。
この時、視線を手元に落としすぎず、背筋を伸ばしたまま行うとスマートです。もし濡れがひどい場合は、実用用のハンカチと入れ替えるなどして対応しましょう。
末広(扇子)とハンカチの位置関係
黒留袖を着る場合、帯の左側に「末広(すえひろ)」と呼ばれる扇子を挿します。ハンカチと末広の場所が喧嘩しないように注意が必要です。
基本的に末広は飾りの意味合いが強いので、頻繁に出し入れすることはありません。ハンカチとの共存方法を確認しておきましょう。
帯に挿す末広との干渉を防ぐ
末広は帯の左側、帯揚げのあたりに挿すのが一般的です。そのため、帯にハンカチを入れる場合は、右側に寄せるか、または袂に入れてしまうのが安全です。
同じ場所に詰め込むと、帯周りが窮屈になり、末広が落下する原因にもなります。それぞれの定位置を決めて、お互いが干渉しないように配置しましょう。
重ねて持つ時の美しいバランス
立食パーティーなどで、末広を手に持つ場面があるかもしれません。その際、ハンカチも一緒に持つことになると、手元がごちゃついて見えてしまいます。
基本的には、末広を持っている時はハンカチはしまっておきます。どうしても両方持つ必要がある場合は、ハンカチを小さくたたみ、末広の下に隠れるように重ねて持ちましょう。
撮影時のハンカチの隠し方
集合写真などの撮影時には、ハンカチが手に見えていない方がすっきりしてきれいです。袂の奥深くにしっかりと押し込んでおきましょう。
もし手に持っていなければならない状況なら、袖の中に隠すか、バッグの陰に隠れるように持ちます。白いハンカチは光を反射して目立つことがあるので、注意が必要です。
トイレや食事の時のハンカチの扱い
結婚式は長丁場ですので、お手洗いやお食事のタイミングもあります。そんな時、ハンカチは単に手を拭く以上の役割を果たしてくれます。
着物を汚さないための便利グッズとして、ハンカチを最大限に活用しましょう。知っていると得する使い方がいくつかあります。
クリップ代わりにする活用法
お手洗いの際、長い袂や裾が床につかないようにするのは大変です。そんな時、大きめのハンカチがあれば、帯に挟んで袂を仮留めするのに使えます。
着物クリップを持ち歩くのが一番ですが、ない場合はハンカチで包むようにして持ち上げると、着物を直接手で触るよりも汚れを防げます。
膝に広げて汚れを防ぐ役割
披露宴での食事中、ナプキンだけではカバーしきれない範囲をハンカチで補います。特に帯周りは食べこぼしが落ちやすい危険地帯です。
大判のハンカチを帯の上から膝にかけて広げておくと、万が一の時も着物を守れます。高価な留袖を汚さないための、賢い自衛策ですね。
手を洗った後の濡れたハンカチの行方
お手洗いで手を洗った後、濡れたハンカチをすぐに袂に戻すのは躊躇われますよね。正絹(シルク)の着物は水気に弱く、縮みやシミの原因になります。
完全に乾くまで外に出しておくわけにもいきません。一時的にバッグに入れるか、次に解説するような対策をとる必要があります。
ハンカチを落とさないための予防策
「気づいたら袂からハンカチが消えていた…」という事態は避けたいものです。特にツルツルした素材の着物は、摩擦が少なく物が滑り落ちやすい傾向があります。
大切な式典中にハンカチを探してキョロキョロするのは格好悪いですよね。事前にできる落下防止策をいくつかご紹介します。
袖口を軽く押さえる習慣
最も確実なのは、動作のたびに袖口を軽く押さえる習慣をつけることです。特に以下の動作をする時は要注意です:
- 乾杯でグラスを高く上げる時
- 手を振る時
- つり革につかまる時(移動中)
反対の手でそっと袖口の角をつまむように添えるだけで、落下を防げますし、所作としても優雅に見えます。
重みのある素材を選んで安定させる
薄くて軽いシルクのハンカチよりも、ある程度厚みと重みのある綿のハンカチの方が、袂の中で安定します。
特にタオルハンカチは摩擦力も高く、滑り落ちにくいのでおすすめです。2枚目の実用ハンカチとしてタオル地を選ぶのは、落下防止の観点からも理にかなっています。
滑りやすいシルク素材の注意点
どうしてもシルクのハンカチを使いたい場合は、たたむ時に工夫が必要です。摩擦の大きい綿のハンカチで包むようにして2枚セットで入れると、滑り止め効果が期待できます。
また、袂のかなり奥の方、身体に近い側に意識して入れるようにしましょう。滑りやすい素材だということを常に意識しておくことが大切です。
使用後の濡れたハンカチはどこにしまう?
濡れたハンカチの処理は、着物を守る上で非常に重要です。そのまま袂に入れると、湿気が着物に移り、カビや変色の原因になることもあります。
家に帰るまで、どのように保管すれば良いのでしょうか。最後の仕上げとして、濡れたハンカチの管理方法を確認しておきましょう。
濡れた面を内側にたたむ手順
まず基本として、手を拭いた濡れた面が決して外側に出ないようにたたみます。内側に内側に折り込んでいき、外側は乾いた面が来るようにします。
こうすることで、着物に直接水分が触れるのを防げます。ただし、これだけでは時間が経つと水分が染み出してくる可能性があります。
着物を湿気から守るための処置
もしハンカチがかなり濡れてしまった場合は、迷わず袂から出しましょう。無理に入れておくと、着物の生地が湿気を吸ってしまいます。
特に夏場や暖房の効いた室内では、湿気は大敵です。自分の着物ならまだしも、レンタルの場合は特に気を使いたいところですね。
ビニール袋やポーチの活用
ここで活躍するのが、冒頭でご紹介したバッグの中の「ビニール袋」や「防水ポーチ」です。濡れたハンカチはすぐにここへ避難させます。
小さなジッパー付きの袋で十分です。これをバッグのポケットに忍ばせておけば、濡れたハンカチの行き場に困ることはありません。帰宅後はすぐに洗濯機へ入れられるので衛生的ですね。
まとめ
留袖を着る日のハンカチ事情について、収納場所から選び方、所作まで詳しく見てきました。たかがハンカチ、されどハンカチ。事前の準備が当日の心の余裕につながります。
最後に、この記事のポイントを振り返っておきましょう。
- 基本の定位置は「袖の袂(たもと)」の奥
- 礼装用の白と、実用的なタオルの「2枚持ち」が正解
- 袂に入れる時は、袖口を軽く押さえて滑り込ませる
- 濡れたハンカチはビニール袋へ入れ、着物を守る
これらのポイントを押さえておけば、結婚式や式典で慌てることはありません。美しい着物姿とスマートな所作で、大切な方のお祝いの日を心から楽しんできてくださいね。
